私たちにできること
西陣織の技術を後世に伝えていくために
紋紙データ編集・作成ソフトの開発など、時代に合わせて生産工程をアップデートするための技術支援に力を入れています。一方で、現在使われている古い織機をこれからも使い続けられるよう、故障や不具合の相談を受けて原因調査を行います。また、伝統産業技術後継者育成研修では西陣織コースを開催し、毎年多くの方に参加いただいています。
最新のIT技術を繊維産業の発展に活かす
目視検査において人をサポートする技術開発に取り組んでいます。画像処理やディープラーニングを活用し、製織中の機械の誤動作や織物欠陥の検出を目指しています。AR(拡張現実)の領域では、着物の試着イメージを3Dで仮想表示するシステムを開発しました。技術をうまく使えば、様々な場面で、人が時間をかけて行っていた作業を自動化することができます。
繊維製品の品質をとらえ、価値を伝える取組
「やわらかい」「なめらか」などの人が肌から得る感覚を、客観的に数値化するための技術支援や研究開発を行っています。衣料品や化粧道具など様々な商品開発に活用いただいています。ものづくりの価値を高め、社会に届けるお手伝いができればと取り組んでいますので、お気軽にご相談ください。
試験分析の例
織物や繊維に対する種々の試験をJIS規格に基づいて行います。また、規格にはない場合でも依頼に必要な様々な試験についても所有設備で可能な場合は対応しています。さらに、繊維材料にこだわらず、フィルムなど繊維材料以外にも幅広く対応しています。
主な取扱設備機器
- 部分整経機、サンプル整経機
- リング式撚糸機、意匠撚糸機
- 両12丁シャットル織機、2688口複動式電子ジャカード、1344口単動式電子ジャカード
- 風合い計測KESシステム
- 静・動摩擦測定機
最近の活用事例
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記事を読む
西陣織のデザインの限界を打ち破る
独創的な意匠を実現した片側紗風通織物今河織物株式会社
業種:伝統産業,繊維工業
対応分野:製織・DX
最近の研究成果
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コミュニケーションロボット用きものの制作と着装効果
対応分野:製織・DX
筆者:小田 明佳、鰀目 菜々、知念 葉子、安久絵里子、岩根 榛花、笹野 未有、林 夏未、原田 悦子
2023年度発行 -
紋織物向け欠陥領域検出自動学習システムの実現可能性の検討
対応分野:製織・DX
筆者:本田 元志、廣澤 覚、北口 紗織、佐藤 哲也
2023年度発行 -
小幅織機から広幅織機へ転換するための研究―複数本取りの製織に向けた国産広幅レピア織機改造による生地耳形成について―
対応分野:製織・DX
筆者:仮屋 昭博、廣澤 覚、本田 元志、小田 明佳、岩﨑 健太
2023年度発行 -
視覚評価および畳み込みニューラルネットワークによる光学画像からのピリング等級判定における照明角度の影響
対応分野:製織・DX
筆者:本田 元志、廣澤 覚、倉本 幹也、室瀬 美咲、北口 紗織、佐藤 哲也
主な研究シーズ
CGSII注1)新アプリケーションの研究開発
西陣織を代表とする紋織物業界向けに、紋織物を織るための、紋紙データを編集・作成するソフトウェア開発を通じて、生産工程の改善、新製品の開発を支援しています。
時代と共に使いやすいインターフェイスや求められる機能は変化してきます。「新Windows版CGSIIソフトウェア」については、基本的な機能をまとめた「基本パック」と応用的な機能をまとめた「応用パック」に分けて提供しております。また、ストーブリ社製の電子ジャカードフォーマット(JC5データ)への変換対応、JC5データの拡張領域(対応する織機の制御に用いるデータ領域)へのビット単位のデータ設定も対応していますので、最新の織機運用も可能です。
CGSIIフォーマットは, 西陣織工業組合と京都市染織試験場注2)が中心となり、1999年に策定したジャカード制御用データフォーマット(規格)です。一般に公開された規格であり、誰でも使用していただけます。
GSIIフォーマットの詳細については下記リンクをご覧ください。
ジャカードデータCGSIIフォーマット注3)
注1)コンピュータ・グラフィック・システムの略語で、西陣織等の紋織物を作る場合に必要となる紋紙データ情報の一種で記録媒体に記録する際の書き込み方(フォーマットの名称)です。
注2)京都市産業技術研究所の前身の一つ
注3)冊子で公開されていたものを当研究所が電子化(2015年)
CGSIIデータの整合性をチェックするソフトウェア及びドライバソフトウェア「FD-Driver for CGS」を公開しています。
下記使用条件をお読みいただき、同意いただける場合はダウンロードしてご使用ください。
CGSIIデータチェックソフトウェア及びドライバソフトウェア「FD-Driver for CGS」使用条件
著作権
- 本ソフトウェアの著作権は、地方独立行政法人京都市産業技術研究所が保有します。
禁止事項
- 本ソフトウェアの複製、譲渡、販売、改変、リバースエンジニアリング
免責
- 本ソフトウェアの使用に起因して、使用者又はその他第三者が被った直接的、偶発的、その他いかなる損害について、原因の如何を問わず、弊所は一切の責任を負いません。
その他
- 弊所は事前に周知することなく本ソフトウェアの仕様を改訂、若しくは公開を中止することがあります。
動作環境
- CGSIIデータチェックソフトウェアについて
最新のサービスパック、.NET Framework4以降がインストールされている下記OS
Windows 8.1、Windows 8、Windows 7、Windows Vista
- ドライバソフトウェア「FD-Driver for CGS」について
ダウンロードファイルに同封されております「RELEASE_re.TXT」ファイルをご確認ください。
本ソフトウェアをダウンロードした時点でご使用条件に同意していただいたものとみなしますので、同意されない場合はダウンロードなさらないでください。
CGSIIデータチェックソフトウェア
ファイル構成は以下
- CGSIIDataChecker.exe:ソフトウェア本体
- CGSIIUtil.dll:ソフトウェアで使用するライブラリ
- readme_使用条件(はじめにお読みください).txt:使用条件等文書
ドライバソフトウェア「FD-Driver for CGS」
ファイル構成は以下
- fdcgs104.exe:ドライバソフトウェア本体
- install_re.pdf:インストール説明書PFDファイル版
- INSTALL_re.TXT:インストール説明書テキストファイル版
- RELEASE_re.TXT:リリースノート
画像処理におけるAI技術の活用
デザインのある紋織物を対象とした織キズなどの異常検出は非常に難しい課題であり、このような織物の検反工程は自動化できておりません。西陣織の製造においては織物異常が発生した段階で製織を中断し、その場で修正を行う必要がありますが、この判断は職人の目視に頼っている現状があります。これらを踏まえ、画像処理により織物異常を検出する技術開発を行っております。
機械学習による新規な異常検出手法を提案し、日本繊維機械学会の論文誌に採択されました。多種多様な織物異常に対応できるよう、研究から実用に向けて開発を進めています。
教師なし学習により異常が含まれる画像から正常画像を予測した例
(左:異常、右:正常予測)
http://www.mi.imati.cnr.it/ettore/NanoTWICE/
筆やブラシの力学特性測定法の提案
京友禅の筆や化粧用ブラシの毛束には獣毛が多く使用されています。しかしながら、近年はワシントン条約や動物愛護などの社会情勢を受け、獣毛に代わる材料として、獣毛を模擬した合成繊維の開発に取り組まれています。
ブラシなどの使用感は、繊維素材としての特性だけでなく、毛束の形状やサイズも影響します。すなわち、集合体としての評価が必要です。そこで、実際の使用方法を反映し、ブラシなど各アイテムに求められる特性を、力学量で測定する方法を提案しています。さらに人がどのように感じるのかを調査し、力学量との関係も研究しています。
その他
機械学習による柄織物の教師なし欠陥検出法の提案と検証(Journal of Textile Engineering, Vlo. 67, pp. 87-97, 2020)詳細はこちら
日本繊維機械学会賞 論文賞受賞
紋織物向け欠陥領域検出自動学習システムの実現可能性の検討(Journal of Textile Engineering, Vol. 68, pp. 87-97, 2022)詳細はこちら
繊維製品消費科学会 2021年 学会賞 年度論文賞受賞
畳み込みニューラルネットワークを用いたピリング等級判定の試み(繊維製品消費科学,Vol. 61, pp. 730-737, 2020)詳細はこちら
視覚評価および畳み込みニューラルネットワークによる光学画像からのピリング等級判定における照明角度の影響(繊維製品消費科学, 63, pp. 250-257, 2022)詳細はこちら