製品の高付加価値化・機能化を目的として、最終加工技術である表面処理技術(特に湿式めっき及び陽極酸化)に関する研究開発、技術移転・指導、試験・分析、人材育成及び研究会育成の業務を担当し、めっき業界等の技術支援を行っています。
最近は、エネルギー・環境分野に関わる新規機能めっき皮膜の研究開発によるめっき皮膜の用途開発及び、めっきの応用技術である電鋳技術によるものづくり(精密部品・金型の作製等)に取り組んでいます。
表面処理技術、めっき技術は機械金属、電気・電子部品、自動車、化学などの幅広い基幹産業を支える基盤技術であり、今後ますますその重要度は増していくものと確信しています。また、これからのグローバル化社会は、独自技術を持つことが生き残りの条件になるといわれている中で、電気めっき技術、電鋳技術、微細加工技術、表面処理技術、表面分析・表面形態評価等の得意技術を活用し、各種材料表面の環境調和型・ナノ表面加工技術による高機能部材の開発、表面分析・表面形態評価技術等のナノ計測技術の確立を目指しております。今後とも電気めっき技術を中心とした表面処理関連技術を応用した事業化を、企業との共同研究等を通して積極的に取り組んでいきたいと考えております。
めっきプロセスを応用した「電鋳技術」を得意技術としており、他の機械加工等の製造プロセスでは不可能な微細形状を正確に転写できる「銅電鋳技術」を仏壇・仏具用金具の量産技術に日本で初めて展開するなど、伝統産業分野のものづくりに活用されてきました。その後、ニッケル電鋳技術の研究開発を行い、その成果は、現在のCD等の金型や回折格子等に活用されています。また、近年「電鋳技術」は他の機械加工等の製造プロセスでは不可能な先端技術のものづくりプロセスに広く利用されつつあり、その重要性を増してきています。現在の研究課題としては、低熱膨張電鋳プロセス、電鋳技術による微細加工技術、ナノ形態制御表面処理技術及びエネルギー・環境分野に関わる表面処理プロセスの開発などに取り組んでいます。
中小企業で困っておられる技術上の様々な問題について、技術相談・指導に応じています。また、中小企業の生産現場を直接お訪ねして現場の実態に即した技術改善のお手伝いをしています。技術相談内容としては、電気めっき・無電解めっき技術、電鋳技術(微細加工技術)、陽極酸化、その他金属表面処理技術を担当しています。
昭和46年度から電気めっき業における公害の未然防止を図ることを目的として「電気めっき排水処理巡回指導」を実施しています。毎年10社前後の巡回指導を行い、巡回指導結果を京都府鍍金工業組合が開催する「環境技術講習会」において報告し、環境保全活動の支援を行っています。
耐食性試験(塩水噴霧試験)及び不良対策・品質向上及び新製品開発を目的とした性能評価試験を中心に依頼試験・分析を行っています。その内容としては、各種めっき皮膜の不良対策、原因解明を目的とした金属顕微鏡による評価、集束イオンビーム試料作製装置、電界放射型電子顕微鏡による表面処理皮膜の断面形状及び組織の微細観察などを実施しています。
京都府鍍金工業組合青年部の「鍍秀会」の活動支援を実施しています。鍍秀会の活動としては、総会1回、研究例会4回、工場見学会1~2回を実施しています。研究例会は、最新の表面処理技術を初めとし、競合技術や材料、ナノテク関連等幅広い分野での知識習得を目指しています。研究例会の開催企画にも積極的に参加し、会員とともに研究例会の内容を充実するための支援を行っています。
電鋳プロセスでは機械加工法と比較して高い寸法精度で金属の微細加工が可能となるため、メタルマスクやフェルールなどのNiまたはNi-Co合金電鋳製品が電子・通信デバイス用部材として用いられています。しかし、従来のNiを主成分とする電鋳製品では温度変化に対する寸法安定性が不十分であるため、さらに高精度・高信頼性を要求されている次世代デバイスへの対応には限界が見えつつあります。そこで、我々は鉄含有率によって任意の熱膨張係数を有する熱部膨張制御合金であるFe-Ni合金めっきの開発を行い、これまでに従来のNiに比べ熱膨張が約5分の1以下となるFe-42mass%Ni合金電析が得られるめっき条件を見出しました。さらに、最も低い熱膨張特性を示すインバー(Fe-36mass%Ni)合金の電析(厚さ約150μm)の開発も成功いたしました。
「電鋳技術」と「微細加工技術」の融合による最先端の微細加工金型のものづくりを立命館大学及び市内めっき企業等による産学官共同研究(H15~17年戦略的基盤技術力強化事業)を行い、SR放射(シンクロトロン)光を利用した超精密三次元リソグラフィにより高精度三次元複雑形状を有する超精密金型母型の開発および Fe-42mass%Ni合金電鋳技術を用いた高精度・高強度の超精密電鋳金型の作製技術に関する研究開発により、次世代光情報デバイスの光回折格子の実用化および製品化に向けたナノスケール超精密金型母型の開発に成功しました。
また、地域産学官連携科学技術振興事業費補助金イノベーションシステム整備事業、地域イノベーションクラスタープログラム(グローバル型)「京都環境ナノクラスター」事業(H20~24)による産学官共同研究において、Fe-Ni合金の中で最も低い熱膨張特性を示すインバー(Fe-36mass%Ni)合金めっき技術とフォトリソグラフィー技術を組み合わせた低熱膨張Fe-Ni合金電鋳による微細加工の基礎的検討を行い、現在、電鋳製メタルマスクの試作に成功しております。
アレルギー・有害性・金属価格の高騰などが問題となっているニッケルめっきの代替として開発した「シアンを用いない環境調和型CuSn(スペキュラム)合金めっき技術」の実用化研究を京都市内のめっき企業とともに提案公募事業による競争的研究資金(JST H17シーズ育成試験、H18-20戦略的基盤技術高度化支援事業、H22~H24「京都環境ナノクラスター」事業)を活用し、その成果を京都ブランド(技術の高度化・環境へのやさしさ・安全性)とする展開に取り組んでいます。本めっき浴から得られたCuSn(スペキュラム)合金電析膜は金めっき下地として従来のニッケルめっきよりも非常に優れた耐食性を有しており、代替ニッケルめっきのみならず、高耐食性Auめっきプロセスへの展開を視野に検討を行っております。