文化財に用いられる天然樹脂等高分子材料の 熱分解ガスクロマトグラフィーによる成分分析
- 技術ノート
- その他
担当者 |
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概要 |
古建造物や工芸伝世品の多くには天然樹脂等の高分子材料が塗料,接着材等として使用されている。今後の適切な保存,修復方法を検討する上で,その材質や製作技法,そして過去の保存方法や修復履歴等を明らかにすることが重要である。そこで,各種漆材料,ボイル油並びに塗料,接着材料について硬化物を作製し,熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC)測定で得られたデータから,材料の判別等有用な知見が得られる可能性について検討した。 その結果を以下に示す。漆材料硬化物について,日本産生漆と中国産生漆の判別は困難だったが,日本産生漆とミャンマー産生漆もしくはベトナム産生漆との判別は可能だった。また,ミャンマー産生漆とベトナム産生漆の判別も可能だった。そして,赤呂漆と黒呂漆の判別は困難であったが,朱合漆は添加物由来のピークの存在が確認できた。ボイル油材料硬化物について,煮亜麻仁油,煮桐油並びに煮荏油は,僅かな相違が確認できたものの全体的に同様のピークパターンを示し,判別は困難であった。そして,これらボイル油材料硬化物のパイログラムは,朱合漆硬化物と同様にリテンションタイムが30~40分において幾つかのピークが検出され,これは朱合漆硬化物とそれ以外の漆材料硬化物を判別する有効な情報であると考えられた。塗料,接着材料硬化物について,ロジン,ダンマルゴム並びに柿渋は特徴的なピークパターンが得られ,今回測定した他の硬化物との判別は可能であった。ゼラチン,にかわ並びにふのりは特徴的なピークパターンが得られなかった。また,ポリビニルアルコールは測定開始直後に鋭く強いピークが集中したピークパターンとなった。 このように各種漆材料,ボイル油並びに塗料,接着材料の硬化物のPy-GC測定を行うことによって,材料判別等について幾つかの有用な知見を得ることができた。 |
研究期間 |
平成26年4月~平成27年3月 |
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キーワード
- パイログラム
- ボイル油
- 塗料
- 接着剤
- 漆
- 熱分解ガスクロマトグラフィー