陶磁器への焼付漆についての基礎的検討(その3) スリによる焼付漆及び焼付前の硬化についての検討
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担当者 |
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概要 |
第1~2報において陶磁器への焼付漆の条件検討を行った。これまでの実験では漆の塗布を「刷毛塗」で行ったのに対し,今回は,漆を塗った後に拭き取る「スリ」の方法で行った場合について検討した。磁器の焼締,陶器の焼締のテストピースを用い,「刷毛塗」による実験と同様の手順で,「スリ」による焼付漆の条件検討を行った結果,磁器の焼締で付着性が良好な結果は,1)180℃/30分,1)150℃/120分,陶器の焼締で良好な結果は,1)150℃/60分,2)150℃/120分で得られることが分かった。また,これまでの実験では,漆を塗布した直後に焼付する手順であったが,これに対し,塗布した漆を焼付する前に,標準条件(20℃/70%RH)下で一定時間をおいた場合,両者の付着強さに差が生じるかどうかについて検討した。漆を塗布し標準条件で硬化させた後に恒温恒湿室(23℃/50%RH) で72時間保管したテストピースを,塗布直後の焼付で良好な付着強さが得られる条件で焼付した。「刷毛塗」の場合,漆を塗布後に時間をおいた場合と塗布直後とでは焼付の付着強さは同様に良好である。しかし「スリ」の場合は,塗布後に時間をおいた後の焼付は不良となる。 さらに,標準条件下で焼付を実施するまでの時間による差が生じるかについて検討した。焼付を実施するまでの時間を(1)塗布直後,(2)塗布後8時間経過後,(3)72時間経過後,(4)240時間経過後の4条件を設定して実験を行った。焼付条件は180℃/30分とした。「刷毛塗」の場合は,陶器と磁器のいずれも焼付を実施するまでに時間をおいた場合の付着強さは良好であり塗布直後と大差はなかった。また焼付を実施するまでの時間による差は大きくは見られなかった。一方,「スリ」の場合は,陶器と磁器のいずれも塗布直後は良好であったのに対して,焼付を実施するまでに時間をおいたものは著しく不良であり,その時間による差は見られなかった。「スリ」で焼付する場合,標準条件下で時間をおいてから焼付を実施する場合の温度と時間の条件については更なる検討が必要である。 |
研究期間 |
平成26年4月~平成27年3月 |
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キーワード
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