界面の解析によるCrNを被覆した超硬合金材料の高耐食性機構の探索
- 研究抄録
- 金属
担当者 |
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概要 |
高価なレアメタル(タングステン(W)やコバルト(Co))が含まれる超硬合金は、その硬度や強度の高さから金型や切削工具のような金属材料の基材として、さまざまな用途に利用されている。また、基材に硬質皮膜を被覆すると、製品寿命や耐食性、耐摩耗性といった機能性が向上する。通常、硬質皮膜はTi やCr、または複数元素などから構成され、単層や積層構造をとる。近年、硬質皮膜そのものに関する研究が高度化する一方、基材と硬質皮膜の相互作用については、ほとんど調査されてこなかった。超硬合金に対してCr 系硬質皮膜を被覆すると、高密着性と耐食性を示すことからよく利用されているが、その原理については明らかにされていない。そこで本研究では、基材(超硬合金と高速度工具鋼)と硬質皮膜(TiN とCrN)の界面で生じる相互作用に着目した。具体的には、界面の元素組成や結晶構造解析により、高密着性や耐食性を生み出す原因を分析した。その結果、Cr系硬質皮膜の成膜時にCrイオンが基材表面に浸透し、W と反応することで界面に厚さ約10 nm の結合層(CrW)が生成され、基材と硬質皮膜の高密着性を実現することを明らかにした。この現象はTiN成膜時や、基材が高速度工具鋼の場合には起こらなかった。さらに、結合層の電気化学特性評価を行うと、酸・塩基性条件下において超硬合金を腐食から保護することが示された。したがって、結合層は基材と界面の密着性だけでなく、CrN で被覆された超硬合金材料の耐食性向上にも寄与している可能性が示唆された。これらの結果は、利用目的に応じた適切な基材や硬質皮膜を効果的に選択する手助けとなる。 |
原題 |
Mechanism of high corrosion resistance for cemented carbide materials coated with CrN via interface analysis |
発行年度 |
2024年度発行 |