電気めっき技術への飽くなき探求
すぐれた光沢をもつ環境調和型合金めっき
DATA
- 成果
- 技術開発
- 業種
- 金属製品製造業
- 対応分野
- 表面処理
- 支援方法
- 共同研究 / 連携先紹介
- 企業・組織
- メテック株式会社
- ポイント
-
- 産技研との共同研究により有毒なシアンを使わない環境調和型のめっき技術を開発
- めっきに使用する電力を抑えられるほか、厚さにばらつきが出にくいという大きな特徴があり、電子部品や装飾品向けに国内外へ展開が期待される
産技研との共同研究の開始
Q.産技研との連携は。
当社は、1918年の創業以来、様々な電気めっきの可能性を追求し続け、多彩な表面処理技術を開発してきました。産業機器、自動車向けの電子部品や半導体へフィールドを拡大し、中でも半導体をはじめとするエレクトロニクスの分野の表面処理では、業界のデファクトスタンダードになった技術開発も少なく ありません。産技研とは常に連携して事業を進めてきましたが、環境調和型のめっき技術開発について、平成18年から共同研究を実施致しました。
共同研究による技術開発
Q.共同研究で目指した技術は。
情報家電や自動車などに広く用いられるニッケルめっきですが、ニッケルが希少金属であり、将来の資源枯渇が懸念されるとともに、ニッケル化合物の発がん性およびアレルギーなど安全性が危惧されています。そこでニッケルめっきと同様の銀白色の色調の銅-スズ合金めっき(スペキュラム合金めっき)が代替技術として有望視されています。しかし、これには有毒なシアン化合物を使用することから、作業者の安全性や排水処理の問題があり、更には、成膜条件の制限からめっきできる素材が限られるという課題がありました。そこで、平成18年から産技研や京都大学等と共同研究を実施。その成果として、有毒なシアンを使わない環境調和型のスペキュラム合金めっき技術を開発しました。この技術はニッケルめっきと同様の色調で、更に、従来技術では不可能であったあらゆる素材にめっきが可能というものでした。
課題解決に向けて産技研とともに
Q.課題解決のために苦労した点はありますか。
スペキュラム合金めっきの場合、スズを約50%程度共析させなくてはいけないのですが、これが非常に難しいです。高校の化学でおなじみの金属の「イオン化傾向」を思い出していただくと、銅に比べてスズの方がイオンになりやすいので単純に二つの金属を溶解した場合、めっきすると銅が優先的に析出します。銅の優先析出を抑える方法が比較的簡単にシアンを使っためっき液になります。
これに対して、当社では、産技研と共にシアンを使わない酸系のめっき液を開発しました。シアンを使わないため、環境に配慮すると共に、半分の使用電気でほぼ同じめっきの厚さが得られます。開発しためっき液の最大の特長は、めっき浴中の銅/スズイオン比とほぼ同程度の組成の皮膜が得られることです。また、めっきでは電気が集中するところが必ず出てくるため、通常、めっき皮膜の組成に大きなばらつきが生じます。しかし、このめっき液では、大きな違いが現れません。合金めっきの場合、これはかなり画期的なことです。今後は、電子部品や装飾品向けに国内外へ展開していくとともに、スペキュラム合金めっきの受託加工を受けてまいりたいと思います。
これからも産技研とともに
Q.産技研に期待することは。
お客様からの技術的ニーズが日々高まる中、当社の様に充分な研究開発体制を持たない中小企業にとって、地域の公設研究機関は非常にありがたい存在です。産技研には京都府鍍金工業組合としてもお世話になり、色々とご指導いただいておりま す。今回の研究は足かけ10年以上にも及ぶ長期間の成果が実り、大変感謝しております。これからも京都から新しい技術を発信できるように努力してまいります。
担当研究員から一言
めっき技術は、素材の表面に金属薄膜を形成し、省資源で機能性や意匠性を飛躍的に向上させる“ものづくりの要素技術”です。本合金めっきは、ニッケルアレルギーに対応した“人にも優しい環境調和プロセス”として、社会の持続可能な発展に貢献できることを期待しております。
PROFILE
メテック株式会社
所在地:京都市南区上鳥羽藁田町1番地
電話:075-661-4900
URL: https://www.metek.co.jp/
事業内容:①ディスクリート、オプト及びLSI等の半導体部品用リードフレーム並びに精密機器部品に対する機能めっき等の金属表面処理 ②モールディング及び後加工処理