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活用事例集

いっちん技術で環境負荷の少ない京焼・清水焼を制作
鉛を含まないフリット(釉薬)を活用した陶磁器

2023.09.01
  • 品質改善
  • 新商品開発

DATA

成果
品質改善 / 新商品開発
業種
伝統産業 / 窯業
対応分野
陶磁器・ファインセラミックス
支援方法
技術相談
企業・組織
有限会社洸春陶苑
ポイント
  • 産技研が開発した鉛を含まないフリット(釉薬)の特徴をつかみ、理想の色味や書き味で表現した商品を開発

産技研が環境負荷の少ない無鉛フリットを開発

Q.無鉛フリットを使った商品開発への経緯を教えてください。

これまで、筒で粘土を絞り出して線を盛り上げて描く「いっちん」技法を用いて細やかな文様を描き、その線文様の内側を上絵具のような色釉薬で色分けし、鮮やかな発色が印象的な交趾(こうち)の器や茶道具を制作してきました。交趾に使用される釉薬は、高い温度(1200℃以上)で焼いて得られる一般的な釉薬とは異なり、800℃~ 900℃程度の低い温度で焼くことでガラス質になる特徴があります。このガラス材料のことをフリットと呼び、その材料の主成分に鉛が使われてきました。ところが、食品衛生法が改正され、鉛を含んだフリットを使用した陶磁器に対する規制が厳しくなり、鉛による人体への影響や環境への問題から鉛を含まないフリット(無鉛フリット)を使用した商品開発の必要性が生まれてきました。

そこで、産技研の研究員の方々に相談させていただいたところ、平成13年に産技研が開発、上市した作り手にも使う方にも安心な鉛を含まない京焼・清水焼に適した新たな無鉛フリットを紹介いただき、その特徴をうまく活かした商品の実用化に向け、研究員の方々と議論を重ね、取り組んできました。

無鉛フリットを使用した商品の実用化へ向けて

Q.商品開発時の苦労はありましたか。

交趾は粘土で縁取りした内側全面をフリットで覆い尽くすことから、施釉する面積が広いので、フリットと下地との間に起こる欠陥(ひび割れやフリットの剥離など)がよく生じます。 また、無鉛フリットは有鉛フリットに比べ比重が小さいため筆降り(書き味)が異なり、描画性が悪いという課題がありまし た。そのため、無鉛フリットの特徴を把握して、それらの課題を解決するのに大変苦労しました。フリットを施釉する際に溶くふのり液の調製やフリットに添加する補助的な粘土成分の配合、さらには、色の設計や品質による焼成温度の管理等、そこでも産技研の技術指導を受けながら試行錯誤を繰り返す中で、新しい無鉛フリットの特徴を把握することができ、理想とする色味や書き味を実現することができました。

伝統産業技術後継者育成研修で知識や技術力を習得

Q.以前から産技研は利用されていましたか。

産技研が実施されている伝統産業技術後継者育成研修を平成9年に受けたことからはじまり、産技研とは20年以上のお付き合いです。研修の中の釉薬実習では、産技研の研究員や講師の先生方に指導いただき、低融点材料のフリットを使った釉薬研究に取り組みました。配合や焼成条件の研究を行う中で、今回の技術に繋がる基礎的な知識や技術力を習得することができました。また、産技研の研究員の方はみなさんまじめな方ばかりで、その技術開発や指導の方針にも感銘を受け、今の自分の仕事に活かされています。研修修了後も、制作の中で困り事があればいつも気軽に産技研へ相談させてもらっています。

無鉛フリットを京焼・清水焼のために

Q.今後の展開は

無鉛フリットは、長い時間をかけて産技研の研究員の皆様が研究を重ねられ、その使用感について様々な議論をさせていただきました。私たち事業者の課題に真摯に向き合っていただいた成果が表れている絵具だと思います。この絵具が開発されたことで、国内はもとより環境規制がより厳格な海外に向けても事業の展開が広がり、さらに京焼・清水焼を発展させることができると考えております。

担当研究員から一言

無鉛フリットは有鉛フリットに比べ扱いが難しく、発色が鮮やかでないなどの課題が指摘される中、それを補う技術を着実に構築され、独自の無鉛フリットを使った作品へと繋げておられます。今後の更なる製品開発に向け、引き続き技術支援を行ってまいります。

PROFILE

有限会社洸春陶苑

所在地:京都市東山区今熊野南日吉町148番地
電話:075-561-5388
事業内容:陶磁器製造

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