京都酵母「京の恋」を使用した無濾過生原酒の開発
DATA
- 成果
- 新商品開発
- 業種
- 食料品・飲料
- 対応分野
- バイオ・食品・醸造
- 支援方法
- 技術相談
- 企業・組織
- 羽田酒造有限会社
- ポイント
-
- 産技研が開発した京都酵母「京の恋」を初めて実用化し、これまでの自社製品にはない香りと酸味の特徴を有した日本酒を開発
新しい酒造りにチャレンジ
Q.開発に至るきっかけを教えてください。
これまで、京都北山の京北の地で、自社の田んぼで酒造りに使う米を栽培するなど、地域に根差した日本酒造りに邁進してきました。そんな中、新しい酵母を使った酒造りにチャレンジしようと社内で意見がでました。以前から産技研で開発された酵母を使っていたこともあり、まず産技研に相談することにしました。産技研では当時開発中の酵母があり、実験室での試験製造の結果から、果実の様な香りですっきりとした味わいの酒になる特徴を持っているということでした。
しかし発酵能がやや劣るということで実用化になかなか踏み切れずにいるという現状を知りました。そこで、当社で小さな仕込みタンクを活用して、実用化に向けてチャレンジすることになりました。
産技研の支援を受けて試験製造に着手
Q.開発時の苦労はありましたか。
発酵力が弱いということを聞いていたため、仕込みの配合や温度経過について、発酵がもたつかないように、産技研の研究員と検討を重ねました。いよいよ仕込み本番となり、研究員にも蔵まで出向いてもらい、万全の体制で進めました。心配していた発酵の遅れはなく順調に進み、果実のような香りのする「もろみ」をみながら出来上がりを楽しみにしていました。
しぼった酒のきき酒の時にも、研究員に蔵に出向いてもらい、官能評価を行いました。今までの当社の酒とは趣の違う、すっきりした味わいの酒となっていました。産技研の成分分析もそれを裏付けする結果となり、当初は従来製品の一部にすることを考えていましたが、お客様にもぜひ評価していただきたいと思い、急きょ新たな商品として販売することにしました。
テスト販売の結果も良いもので、次の年には仕込みの規模を拡大。酵母の名前も「京の恋」と決まり、本格的な商品開発へと進みました。
ワイングラスで楽しめる日本酒
Q.製品の特長を教えてください。
水源は、自然豊かな京北町にある蔵の背後を流れる桂川源流域の伏流水を使用。原料米として「京都府産五百万石」を使用しています。「京の恋」の華やかな香りとすっきりした味わいを生み出すという酵母の特徴を活かし、ハー ブやチーズなどを合わせながらワイングラスで楽しめる新感覚の日本酒となっています。
これからもこだわりの日本酒づくりを
Q.今後へ向けてメッセージをお願いします。
開発した製品の酒質は近年の吟醸香とは異なるタイプで、市場に新鮮な風を吹かせそうな期待をいだきました。自社製品の中で新たな特長を持つ本製品は、日本全国でお客様にも大変好評いただきお陰様で初年度製造分は完売となりました。
製造計画から製品分析の支援とこのような環境をいただいたことを深く感謝しております。今後も本事業を基礎として、さらなる進化を求めてまいります。