伝統×先進技術
透け感のある新しい陶磁器の開発
DATA
- 成果
- 新商品開発
- 業種
- 伝統産業
- 対応分野
- 陶磁器・ファインセラミックス
- 支援方法
- 技術相談
- 企業・組織
- 株式会社 陶葊
- ポイント
-
- 粘土を使わない新しい素地材料に挑戦し、透光性を表現
- 素地材料の工夫により、歩留まりがほぼ100%に向上
- 新聞・雑誌などのメディアに複数掲載
株式会社陶葊(とうあん)は、1922(大正11)年に京都の東山泉涌寺にて創業した、京焼・清水焼の窯元です。現在は、四代目当主 土渕 善亜貴 氏を中心とした約30名の職人が腕をふるい、生活にうるおいをもたらす作品を数多く創り出しています。
事業における課題
夏場でも楽しめる新たな陶磁器を開発したい
陶磁器はガラス製品に比べ、夏場の売れ行きが下がるという課題がありました。「夏でも手に取ってもらいやすいよう、透け感のある新たな作風の京焼・清水焼を開発したい」という思いから、産技研にご相談をいただきました。
課題解決に向けた挑戦
先進技術を取り入れ、歩留りの向上を目指す
陶磁器の材料には粘土が使われますが、粘土で透光性を表現することは不可能です。そこで、粘土を使わない新しい素地材料として、ファインセラミックスを提案。ファインセラミックスの鋳込成形※1の製法を応用した成形方法に挑戦しました。
※1 鋳込成形:石膏型に泥しょうを流し込み、器を成形する技法。石膏が水分を吸収することで、泥しょうが固形化する。
製品化にあたって、脱型時に成形体が割れるという課題がありました。これを改善するために、産技研と第一工業製薬(株)が共同開発したセルロースナノファイバー(CNF)※2を、鋳込成形に用いる添加剤として使用しました。素地材料の主成分である長石(釉薬のガラス質成分)に微量のCNFをまぜることで、歩留まりがほぼ100%に向上し、量産が可能になりました。
※2 セルロースナノファイバー(CNF):木材から得られるパルプを1ミクロンの数百分の1以下のナノオーダーにまで高度にナノ化(微細化)した親水性バイオマス素材。
事業における成果
新素材を生かした京焼・清水焼「ゆうはり」が完成
「光を愉しみ、光と遊ぶ。」というコンセプトの新製品が完成。新聞・雑誌をはじめ複数のメディアに取り上げられ、同社の売上げ増に貢献することができました。
企業・担当者のコメント
意匠性の高い製品を生産性の高い鋳込み成型で製造できるようになった意義は大きいです。産技研に相談したことで、先端素材を取り入れ、伝統に固執せず、時代に合った新商品の開発に取り組むことができました。