合同会社COCOO・株式会社佐藤喜代松商店

事業概要・成果

　COCOO は、真空魔法びん構造のステンレスタンブラーのコーティングに天然漆を用いることを発案。佐藤喜代松商店と共同で、日本古来の漆の焼付け技法と下地塗で用いられる粗めの土の粉「地の粉（じのこ）」を漆に蒔き付ける技法を組み合わせることで、新しい漆のコーティング技術を開発しました。この技術を用いて、タンブラーの外側と内側を複数回焼付けしています。
　内外両面に漆をコーティングすることで、口触りよく、金属臭がなく、適温をキープするなど日常遣いに適した特徴を持つ真空漆タンブラー「KISSUL（キッスル）」が完成しました。

開発のきっかけ

　COCOO・北山浩代表は、大手魔法瓶メーカーで研究開発やマネージメントに携わっていた経験から、ステンレス魔法瓶の機能性を活かしつつ、口当たり良く金属臭が気にならない、家の中で毎日使いたくなるような器をつくりたいと考えていました。
　課題だったコーティング材料を社内で検討する中で「漆」に注目。天然素材でありながら耐酸、耐アルカリ性、そして抗菌性など多くの機能を持ち、またその使い心地の良さが魅力である漆を使ってみたいと思いいたりました。

技術開発の経過

　漆をステンレスに塗りたい。協力してくれる漆職人を探したものの、なかなか見つかりませんでした。リサーチした結果、ようやく、佐藤喜代松商店に行きつき、焼付け技法によるサンプル制作を依頼。わずか１週間程度でサンプルが完成しました。
　佐藤喜代松商店では、漆塗りは手仕事であるため技術的に難しいことは産業として継続できないとの思いから、焼付け技法による生産体制においても、焼付けの回数や手順を考え、いかに手数をかけすぎないかを検討しました。また焼付けした漆の塗膜の耐久性については、産技研への技術相談と依頼試験・分析を活用して、実用性を確かめました。こうして「KISSUL」は、現在の体制で、1 日50 個、年間で10,000 個作れる体制を整えつつあります。
　COCOO は、佐藤喜代松商店と出会い、技術的な問題や量産性向上が一気に解決したのです。

産技研の支援内容

• 「KISSUL」の焼付漆の塗膜の耐久性評価（耐酸性、耐アルカリ性の各試験の実施）

【過去実施した佐藤喜代松商店への支援内容】

• 薄膜旋回分散漆「黎明」の共同開発
• 技術指導、相談の実施（令和3 年度知恵創出“目の輝き” 企業認定）

今後の展望と課題

• バリエーションの拡大
  定番商品は現在５色。艶の有無や色の濃淡、グラデーションなど、オリジナル商品のリクエストもあり、今までにはない斬新な質感の商品を、継続的に展開していく予定である。また、現商品は一般的なコーヒーカップと同程度の容量（210ml）だが、海外（特に北米）向けとしては、ビールに適した大型化の要望もあり、拡大を検討中。
• 「KISSUL」の使い心地を体感できる販促方法
  お客さんに見て触ってもらい、かつ商品の説明も含めた接客ができるようなパートナー・販路を求めている。

担当研究員からひとこと

　古来から使われてきた漆の魅力に着目し、温かみがあり、使いやすいタンブラーの開発に成功されています。着実な試験結果に基づき、耐久性が高く、日常使いを可能とする現代のニーズとマッチした製品に繋げておられます。
　本製品をスタートとし、販路を含めた新たな事業展開を見据えておられるため、今後の更なる製品開発が楽しみです。