心地よさの評価技術を活用したビロード化粧用パフの開発
~西陣のビロード織元が産学公連携で新商品開発を実現~
株式会社杣長 × 製織システム・DX 分野
- 「力学特性評価法」による客観評価と、人の使用感という主観評価の両面から、最適な肌触りの生地を選定しビロード化粧用パフを作成。
- 生地特有の肌当たりを損ねないよう昇華転写プリント技術を工夫し鮮やかな花柄プリントを実現。
ビロード生地の評価法の研究から新商品開発へ
株式会社杣長は西陣に唯一残るビロード生地専門の織元。パフ開発のきっかけは平成 18 年に京都市産業技術研究所研究員が同社を訪問した際、パフ用ビロード生地の肌触り(触感)には客観評価の方法が確立されてないため人に伝えたり表現したりするのが難しい、という課題を知ったことでした。
令和元年から客観評価について同社と共同研究を進める一方、京都光華女子大学との産学公連携により、授業の一環で女子大学生とビロード生地を活用した新商品開発のプロジェクトに取り組みました。
「心地よさ」の数値化で生地を選定し花柄プリントで付加価値を高める
プロジェクトでは、まず約30種類ある同社のビロード生地について、共同研究の成果を活用した力学特性評価(※)を行い分類します。そこから生地を選び、女子大学生にビロード生地それぞれの感触を評価してもらい、さらに各自が好む感触を調査して分析しました。その結果から、女子大学生が心地よいとして好む「さらっとかろやか、ほどよい厚み感」というテーマに沿った最適な生地を選定しパフを作成しました。
パフには女子大学生がデザインした鮮やかな花柄を昇華転写プリントし、さらにオリジナルの袋をセットにして付加価値を高めました。同社での自社製品開発に先駆けた新たな挑戦となりました。
今後の取組
現在、BtoC 向けの販路開拓を目指し、自社製品の開発や昇華転写プリント技術を使用したビロードへのプリントの事業化に取り組んでいます。
・㈱杣長からのひとこと
いつも難しい相談に親身になって頂き有難うございます。従来、パフ生地の質感を数値化する方法は無く、商品に求められるのがどの生地なのか判断が難しく、長年課題に感じていました。研究員さんのお陰で、客観評価と主観評価という、これまでに無かった評価法を考えて頂くことが出来ました。
今後は、より多くの人に化粧用パフを身近に感じてもらえるように、BtoCにもトライしていきたいです。
・担当研究員からひとこと
株式会社杣長との出会いがきっかけで、わたしの化粧用具研究が始まりました。同社のパフ生地はどれも心地よく、それでいて感触がそれぞれに異なります。これらの生地の感触を表現し、ユーザーが望むものをより的確に届けられるように、これからも評価方法の開発に取り組んでいきます。
※力学特性評価法…肌当たりが重視される化粧用パフでは、製品の表面摩擦特性と圧縮特性が影響すると考えられる。産技研では、実際の使用状態も考慮し、人の感覚を捉える測定条件やデータ解析の研究を行っている。
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