地域企業のイノベーション支援のために、
まずは私たち自身のつながりを拡げる
産技研リブランディングプロジェクトチーム座談会
産技研では、各業界の方々からの信頼を高め、地域企業に貢献するため、産技研自らの「強み」を見つめ直し、その使命と事業目的をリブランディング(再構築・ 再定義)するために、プロジェクトチームを立ち上げました。
まず初めに取り組んだのは、産技研の使命や目的を定款から読み解くこと。それから、産技研の「これから」を見据えて何をすべきか、何時間も話し合い、何度も案を練り直しながら、少しずつ新しい動きに挑戦しています。
そもそも自分たちの仕事は何のためにあるのか、から考えた
――最初は、組織の使命が定められた「定款」を読み解くところからだったとか。
山本 若手から中堅のメンバーが15人ほど集まって開催しましたね。
堀 既存のブランドを時代の変化やお客様に合わせて構築し直す「リブランディング」という活動をするうえで、まずは自分たちの仕事の根幹を再認識するところからスタートしようと考えました。それで、定款を読んで改めてしっかり理解しようってことになったんです。
野口 読んでみて、定款には立派なことが書いてあるけどよくわからない……というのが正直な印象でした。そこで、誰かが「まず先人の想いを聞こう」と言ってくれて。定款を読むだけでなく、昔からいる先輩方に色々な話を聞いたり、全職員にアンケートをとったり、外部の方にもアドバイスをもらいながら。いやー、大変でしたね。
山本 半年かかりました。話し合う中で、普段の仕事についても考えることがたくさん出てくるんです。どの支援に力を入れていくのか?この事業を必要としているのは誰?この支援でちゃんと役に立ててる?というように。事業自体の見直しに着手できたこともよかったと思います。
――なるほど。そこから、定款に込められた想いを自分たちの言葉で言い換えていったんですね。核となるメッセージ(左下)に「文化」という言葉を入れたのは?
山本 「京都らしさ」にはこだわりたいと思っていました。だから、京都に根付くものを大事にしたい、その気持ちをメッセージに込めたかったんです。そんなことを話し合っている中で「文化」という言葉が浮かんできました。
丸岡 もともと組織名の英訳※に「Culture」が入っていて、「文化」という言葉が出てきたときに先人の想いとつながった気がしました。「文化」に関わる仕事に誇りを感じている職員も多いと思います。
(※ Kyoto Municipal Institute of Industrial Technology and Culture)
堀 技術支援でお客様の課題を解決して終わりじゃなくて、その製品や技術が誰かの生活に役立って、文化として根付くところまで支援する。そういう意識で働けるといいですね。そんな想いを持ちながら、京都の産業を支援したことでどんな未来につなげたいのかを話し合い、創りたい未来像として「技術と文化でイノベーションを起こすまち」という共通のイメージができていきました。
山本 次に、その実現のために私たちがやるべきことは?と考えて、「一緒にものづくり技術の向上に取り組み地域産業の挑戦を支援します。」という一文が出てきて。メンバー間でこれから進むべき方向性を共有できたことで、色々な検討がしやすくなったと思います。
野口 「 一緒に」という言葉も大事ですよね。産業支援機関は、自分たちだけで何かを生み出せるわけではないので。新しいもの、まだ世にないものをつくりたいという相談は多いです。ベンチャー企業だけでなく、老舗企業の新事業の話も。チャレンジを一緒にかたちにしていく仕事は、やりがいがありますね。
丸岡 試験を依頼されて結果をお返しするだけでは、もったいないですよね。その結果をもとにお客様と僕たちがディスカッションすることで、新しいアイディアや解決の糸口が見えてくる。
そこが大事だと思います。
定款から紡ぎだしたメッセージ
知を拡げ、文化を描く
定款 第1条
この地方独立行政法人は、京都のものづくり文化の優れた伝統を継承し、発展させ、新しい時代の感性豊かで先進的な産業技術を創造する使命を持つ公的な産業支援機関として、産業技術の向上に資する事業を積極的に推進することにより、中小企業等の振興を図り、もって京都をはじめとした地域経済の発展及び市民生活の向上に寄与することを目的とする。
――組織の根幹を問い直していく中で、ブランドを再構築する方向性が見えてきた感じがしますね。
丸岡 お客様はどんどん新しい課題や考え方を持ってきてくれるので、多様なニーズに応えられるよう、専門技術の精度を上げながらも、自分の専門分野にこだわらずこれまで以上に新しい技術分野にも挑戦をしていく必要があると思います。
山本 日々の業務に落とし込むうえでは「じゃあ何を大事にしていったらいいの?」ということをもっと簡潔な言葉で言い表す必要がある。そう思って、大事にしたい5つのキーワードも考えていきました。
野口 公的機関として「信頼」に足る存在であること、研究所として高度な「専門知識」を提供することは、産技研がずっと持ち続けてきた姿勢であり、全ての前提になっています。
丸岡 「 人材育成」も大正時代からの歴史があり、産業の発展には欠かせない取組ですね。「価値創造」と「連携」の2つは、これからより強化していきたい部分です。研究という仕事柄、他の業種・職種の方との交流の機会はあまり多くなかったので。色々な考え方に触れることで、支援の幅や発想の自由度を広げていきたいですね。
山本 京都のものづくりがよりよい方向に飛躍するよう、イノベーションを起こせるよう、研究所の存在意義や価値を常に意識して、日々の業務をアップデートしつつ、これからの産技研を作っていければと思います!
京都の成長のために、私たちが大切にしていること
信頼 | 公的な機関として、公正・誠実に、お客様との信頼関係の構築を大切にします。 |
専門知識 | 企業のお困りごとに蓄積された技術で応え、データと知見に基づいた確かな情報を提供します。 |
価値創造 | 広い視野を持ちながら、新しい価値の創造に励み、社会実装に繋げます。 |
人材育成 | 実務的な技術・技能を身に付けた人材を育成し、社会に還します。 |
連携 | 保有するネットワークを活用し、包括的な支援を提供します。 |
場所と機会をつくって会話を増やすことから
――定款を読み解いた後にやってきたことを具体的に教えてもらえますか?
堀 シンプルに、もっとお互いに喋ろうっていうところから始めました。まずは所内のつながりを強くしたかったので、気軽に集まれる場所としてコミュニケーションスペース「Plat」をつくって。
丸岡 改めて「お互いを知ろう」っていう話をするの、なんか恥ずかしいですね!
山本 でも、これまでは自分の研究チームのことばかり考えていました。もともと組織が縦割りで分野ごとに研究室も違うので、横のつながりが薄かったんです。廊下で会っても挨拶をする程度で、他の分野の職員が何をしてるのか、ほとんど知りませんでした。
野口 自分が対応しているお客様が他の分野に関する課題で悩んでいても、自分が知らないから紹介できなかったりもして。分野を横断したサポートがしやすくなる工夫をすることで、よりみ込んだ支援ができるんじゃないかな。
――Plat をつくってどんなことが変わりましたか?
丸岡 皆が意見を言いやすい雰囲気づくりを意識するようになりましたね。輪になって話すとか。がちがちの敬語じゃない、カジュアルなコミュニケーションが増えてきて、空気も変わってきたと思います。風通しがよくなったというか。
山本 それまでは広い静かな会議室に集まるしかなくて、発言するだけでかなり緊張していましたね。
お互いを知ることでサービスがよくなっていく
――活動する中で印象に残っていることは?
野口 新しい試みとして、うまくいった事例を共有する勉強会のような集まり「Good Practice !」を開催しました。他の職員がお客様にどう対応してるのかを見る機会って、あまりないんですよね。周りに声をかけたら、思ったよりもたくさん参加してくれて嬉しかったです。
山本 皆の色んな話が聞けて、すごくためになりました。「GoodPractice !」っていう名前もいいよね。「〇〇勉強会」だと、どうしてもかたくなってしまうし。お互いに良いところを真似していけば、全体のサービスの質が上がっていくはず。これからも続けていきましょう。
――きっと社内で同じようにコミュニケーションに関わる課題を抱えているお客様は少なくないと思うので、ちょっとでも参考になれば嬉しいですね。
新しい取組の例
Good Practice !
お客様への対応や日常業務について、お互いの知見をシェアする所内の集まり。
様々なテーマで定期開催予定。
SILK×産技研オープンデー
具体的な相談がなくても気軽に足を運んでもらえる、予約不要のイベントを開催。
産技研の見学ツアーも実施。
KRPフェス2022に参加
リブランディングが各界で注目されていることを背景に組織と商品のリブランディングについてのトークセッションを行いました。
まだ産技研を知らない人に興味を持ってもらえるように
――所外の方とのコミュニケーションも増やしていこうと、webサイトや広報誌のリニューアル、そしてSNSの発信も見直すらしいですね。
山本 まずは、京都で働く人・暮らす人に存在を知ってもらうところから。「知る人ぞ知る」と言われる状況に満足しないようにしたいですね。
丸岡 実際に会って話すと「親切」「わかりやすい」と言ってもらえるけど、知らない人にとってはかたいイメージがあるのかも。敷居が高いといった感じですね。「こんなこと相談しても大丈夫ですか?」とはよく言われますね。どんな相談でも大歓迎です!小さな悩みでも、夢みたいな話でも。
堀 広報誌や webサイトのリニューアルで、だいぶ印象が変わるはず。レベルの高さはしっかり伝えながら、敷居はぐっと下げて、親しみを感じてもらえるように変わっていきます。
山本 情報発信の時に、受け取る側の視点で考えるようになりましたね。主語を産技研からお客様に変えると、表現が変わってくるんやなって。これまでは所内で完結することが多かったので、外部のノウハウも入れてコンセプトから考える経験はとても新鮮でした。
――今までの活動を振り返ってみましたが、今後はどうなっていきたいですか?
野口 今までとは違うことに挑戦する中で、自分に対する気づきもありました。ネーミングとかの案を出すのは苦手やなぁ、一方でアイディアが豊富な人もいてすごいなぁ、とか。色々な経験が、研究にもいきてくると思います。
山本 イベントなど外部とのコラボレーション企画も増えましたね。他の支援機関との関係性づくりにも力を入れています。活動の広がりをお客様の成果につなげていきたいです。
丸岡 僕たちのお客様って、実は製造業の方だけじゃないですよね。直接ものづくりに関わっていない方も、気軽に声をかけてもらえたら嬉しいです。いろんな業種の方と話していても、
たいてい何かしらものづくりに関わる部分が出てくるので。産技研がハブになって、製造業の方々と他業種の方とのつながりも拡げていければと思います。それと、「この機器があるから相談する」んじゃなく、「この人がいるから相談する」とお客様に思ってもらえるようになっていきたいですね。
山本 リブランディングは変えていくだけじゃなく、変えてはいけないことは大切に守る活動。何を変えて何を残すか、変えたことをどう浸透させていくか、考えながら良いかたちを探っていきたいです。やりたいことも課題もまだまだ山積み。取組に共感してくださる方、興味を持ってくださる方がいたら、是非お話しさせてください。
リブランディング座談会参加メンバー
(聞き手 前田展広事務所 前田 展広 氏)
チームリーダー 山本 貴代
- 研究室(専門分野:表面処理)
- 入所 15 年目
サブリーダー 堀 萌
- 経営企画室
- 入所 8 年目
野口 広貴
- 研究室(専門分野:高分子)
- 入所 5 年目
丸岡 智樹
- 研究室(専門分野:金属)
- 入所 15 年目
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