職人紹介 兼松 俊明 氏
残していくものとアップデートしていくもの次代に伝えたい
祖父、父と代々螺鈿※1を家業としていまして、私も子供の頃から自分なりに貝を切ったり貼ったり、親の仕事場を遊び場にして育ちました。思春期には家業を継ぐことに反発もありましたが、やっぱり手仕事が好きで、自然と継ぐことになりました。
祖父と父は螺鈿だけでしたが、仕事では螺鈿と蒔絵※2が併用された作品の依頼もありましたので、蒔絵も学びたいと父に話し、師匠に就いて習いました。そして、産技研の伝統産業技術後継者育成研修の漆器コース一期生として研修も受けました。塗も加飾も含め総合的な技術を身につけ、独自性の大切さも学びました。研修修了後、修了生でグループを結成し同世代の仲間と交流し仕事の幅を広げました。
また、京漆器の歴史調査に参加する機会があり、祇園祭の山鉾の装飾など、様々な良い仕事を拝見することができて、勉強になりました。「良い物」を見ることは、仕事の良し悪しを判断する基準を自分の中に持つという、とても大切なことです。同時に、自分の作品を人に見ていただくというのも、客観的な判断基準を知り、自己満足に陥らないために大切なことです。
「京都漆器工芸協同組合」や「京都漆器青年会」など、同業の仲間との活動を通じて、技術やものづくりの考え方を共有・継承することは、いずれ大きな財産になり、業界全体の底上げにもなると思います。また、時代に合わせたアップデートも必要です。良いバランスで次の世代に伝えていきたいです。
※1 螺鈿(らでん):夜光貝やアワビなど貝殻の輝いた部分を器物の木地や漆面に装着して施す装飾法のこと。
※2 蒔絵(まきえ):漆面に漆液で文様を描き、金や銀などの金属粉を蒔き付けて定着させる技法、またはその技法を用いて作られた漆器のこと。
PROFILE
兼松螺鈿工芸
京都市東山区堀池町373番地
Tel:075-771-2280
Fax:075-761-4559
Mail:kyoto.shikki@outlook.jp
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