自社の「強み」をいかした研究開発
産技研と共に取り組むGo-Tech事業|FES株式会社
産技研は、競争的資金を積極的に活用し、社会実装を見据えた研究開発を進めています。Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)は、高度な技術開発への挑戦、基盤技術を活用した高付加価値製品の製造、ものづくりとAI、IoTなどの先端技術を融合させた高度なサービス開発などを支援する経済産業省の補助事業です。最大3年間にわたり、中小企業が大学・公設試などの研究機関と連携して行う研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組を支援します。ここでは、2023年度に採択された2件について、産技研との研究開発体制構築の経緯や研究の展望など、参画事業者の方々に伺いました。
FES株式会社 代表取締役 木村 真束 氏
CNF活用による環境調和素材とデジタル技術で唯一無二のものづくりを目指す
連携:学校法人同志社 同志社大学
環境配慮型の難燃性軽量低コスト壁面装飾建材を実現する3Dプリンター成形用粉体材料の開発
―― 研究に至った経緯についてお聞かせください。
当社では、大小様々なオブジェなど、立体造形物制作の事業を展開しています。主に、樹脂にガラス繊維を含侵させたFRP(繊維強化プラスチック)を使うことが多いのですが、2017年に同志社大学での複合材料会議に参加した際に、バイオ由来のCNF(セルロースナノファイバー)を知って関心を持ちました。FRPにCNFを混ぜ、素材の強度アップと軽量化を図るという取組の中で、産技研には材料の強度テスト・評価を行っていただきました。
Go-Tech事業では、3Dプリンターで燃えにくい造形物をつくる研究をしています。今まで不燃性・難燃性の造形物をつくる際は、石膏など燃えにくい材料を使って人手をかけ手仕事で成形していました。それをデジタル化し3Dプリンターで直接製造することを実現するために、セルロースを活用し、軽量で難燃性のある材料開発に取り組んでいます。
CNFの普及のために私が発起人となり関西の同業他社約40社でネットワークを構築しました。私たちがCNFを活用し成果を出すことで「関西のFRPは軽い」「造形物はやっぱり関西がすごい」と業界で、ひいては世界で認められることを目指しています。
―― 今後の展望や取り組みたいことはありますか?
世の中の全体の流れとして、SDGs への取組を問われています。その部分で胸を張って言えることを普通にできているようにしたいですね。そこで、CNFがもっと活用できればと期待しています。また、日本独自の強みである漫画やアニメなどのコンテンツをいかした、唯一無二のものづくりができればとも考えています。それらのことが私たちの仕事の価値になっていくと確信しています。
今後は、もっと材料のリサイクルを検討していきたいです。今までは一度固まるともとの形に戻らない樹脂を使っていたのですが、繰り返し使えるような材料の採用も考えています。Go-Tech事業で使う材料もリサイクルできる可能性を秘めていますので実用化まで持って行きたいです。また、産技研からは今まで皆さんが専門でやってこられた研究をもとに知見をいただけるとうれしいです。それが新たな気づきとなって事業の推進につながるはずです。今後ともよろしくお願いいたします。
PROFILE
研究員より
FES株式会社は、とても独創的で興味深い仕事をされています。産技研はCNFという素材面でつながり、本研究の連携先として参画させていただいております。特に原料の配合、各製造過程で必要となる評価などといった、品質に関わる部分を可視化し明確にしていくことが一番の役割だと思っています。これまでの知見をいかし、測定や評価するだけではない、一歩踏み込んで良いプロジェクトになるような提案もしていきたいです。また、プロジェクトに限らず、新しい展開に結び付けられればと思っています。
(プラスチック分野 伊藤 彰浩)
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