友禅×CGの挑戦 超極細線で小宇宙を表現する金彩友禅の開発
~手描きでは困難なデザインをコンピュータグラフィックスで実現~
光映工芸株式会社 × デザイン分野
- 金彩友禅で多彩な箔を使用し極美の世界を表現した振袖や帯を製品化。
- コンピューターグラフィックス活用で、手描きでは表現できなかった超極細線を着物全体に施した図案を実現。
金彩友禅:金銀など数種類の箔を用い、数十種類の高度な技法を駆使して、作品全体の彩り・輝きを上品かつ豪華に仕上げる友禅の技法。
超極細線をうねらせたデザインを夢見て
光映工芸は、金彩友禅の第一人者・和田光正氏を中心に、独自に開発した多彩な金彩箔を操り作品を創作することで高い評価を受けています。およそ 50 年前、和田氏は手描きなどの従来手法では描けない線として、着物全体に超極細線をうねらせたデザインをコンピューターで描けないかと自ら挑戦されました。しかし当時はコンピューターの処理能力や技術では、部分的な柄のデザインまでしか実現できませんでした。
従来手法では表現できない超極細線を着物全体に施した金彩友禅を実現
平成 29 年に、和田氏は京都市産業技術研究所研究員に改めてコンピューターグラフィックス(CG)技術について相談し、再度挑戦することを決意。産技研研究員とともに、CG を活用して試行錯誤しながら、ついにオーロラをモチーフにした超極細線による小宇宙を表現した図案の開発に成功しました。この図案を基に同社が緻密な写真型を起こし、従来手法では表現できなかった超極細線を着物全体に施したデザインの金彩友禅を実現。あえて地色を一色(ひといろ)で染め上げることで、染に頼らず金彩の配色だけで小宇宙を表現することにこだわりました。これらの一連の技術で振袖、訪問着、帯用のデザインを作成し計 65 点を製品化することができました。
ハンドバッグやネクタイなど新たな商品開発にも取り組む
今後は金彩友禅によるハンドバッグやネクタイなどの小物の新商品開発により、新たなお客様獲得にも力を入れ金彩友禅の魅力をもっと伝えていく取り組みを進めています。
・光映工芸㈱からのひとこと
完成まで実に 4 年間を要しましたが、構図の改良や超極細線の実現のために研究員の方には膨大な図案データを作成してもらいました。呉服販売会ではお客様にこれまでにないデザインだと喜んで着物・帯などを御購入いただいております。50 年超しの夢の実現、そして新しい金彩友禅の夢を咲かせるために心血を注いでいただきありがとうございました。
・担当研究員からひとこと
CG の利点の一つに、人が描いたデザインを正確な線でトレースする機能があり、多くの場面で活用されています。しかし、今回は、フリーハンドでは描けない線を追求し、CG だからこそ描くことができる繊細で美しい線に新たな価値を見出した図案作成のコンセプトに共感し、その開発に取り組みました。
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