
蔵付き乳酸菌発酵エキスをボタニカルに活用
「京都の恵みをいかしたクラフトジン製造」
Natural Spirits 株式会社(森の京都蒸溜所)

事業概要・製品
当社は、福知山市にある日本酒酒蔵の跡地に蒸溜所を設置、酒蔵の歴史と伝統を継承するクラフトジンを製造しています。「健康と安らぎ」をコンセプトに、蔵付き乳酸菌を用い、厳選した京都産の植物素材に対して一次発酵を行い、さらに酵母による二次発酵を経た京素材の発酵エキスをボタニカル(フレーバー)として活用しています。通常、クラフトジンの蒸溜所では素材をそのままボタニカルとして用いるのに対し、同社は独自性の高い発酵素材をボタニカルに活用することで、独特なフローラル香を持つジンの製造を実現しています。
開発のきっかけ
2020 年頃に福知山にある元酒蔵の建物と出会ったことから、私たちの事業は始まりました。蔵の所有者が大切に守り抜いてきた歴史と伝統。その想いに感銘を受けたことが、原点となっています。
当社の親会社は、機能性食品原料製造やバイオマス燃料の研究などを行っており、微生物や発酵に関する知見がありました。こうした経緯から、酒蔵と当社の持つスキルを活かした事業として辿り着いたのが、蔵付き微生物を活用したクラフトジンの製造です。
完成までの経過
産技研に相談し、蔵付き微生物を採取することにしました。当初、日本酒の酵母の採取を試みましたが、長期間閉鎖されていた蔵から蔵由来の酵母を採取することは難しく、代わりに発見されたのが、生存能力の高い有胞子性の乳酸菌でした。これを産技研で培養してもらいK-1860 株として取得できました。
約4 年間かけて数百回の試作を重ね、最終的に、蔵付き乳酸菌と京都の清酒酵母を組み合わせた二段階の発酵プロセスを用いることで、ボタニカルの香りを引き出すことに成功しました。
2023 年8 月頃に完成したジンは、海外の主要なコンペティションで金賞を受賞するまでに成長しています。
今後の展望と課題
- 販売戦略
引き続き、ホテルやバー、料亭などを販売先とし、ブランドの地盤を固め、認知度を高めることを目指しています。 また他社ブランドのOEM も、引き続き展開するとともに、日本酒メーカーなど他社と連携した新たなジンの製造も検討できればと思っています。 - 研究課題
二段階発酵において、独特な「香り」や「味」に関わる酵素反応のメカニズムを解明することで、発酵条件や微生物の栄養源を調整し、さらに品質を向上させたいと考えています。
産技研の支援内容
- 保存されていた酒蔵及び酒造用具から採取した試料を使って培養試験を繰り返し実施し、有胞子性乳酸菌(Weizmannia sp. K-1860 株)を取得。
- 乳酸菌の取得後、保管条件や培養条件の最適化を行い、安定して培養できる条件を決定。
- ORT 事業を通じて、無菌操作技術や乳酸菌の培養・保管技術の習得を支援。
担当研究員からひとこと
期限がある中での蔵付き微生物の採取は簡単ではなく、また採取できてからも一筋縄ではいかないクセのある乳酸菌でしたが、諦めずにこだわり抜かれたことで、伝統ある酒蔵の歴史や文化も引き継がれた唯一無二のクラフトジンを生み出されました。研究開発のご担当者様も増えてパワーアップされましたので、これからも品質向上や新製品開発など、ますます楽しみです。
PROFILE
Natural Spirits 株式会社(森の京都蒸溜所)
所在地:京都市東山区祇園町北側300 番地
MOON BEAUTY GION
URL:https://www.naturalspirits.kyoto/
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