
化粧ブラシの使用感を測定「ブラシ物性試験機の開発」
カトーテック株式会社

事業概要・成果
当社では、風合い試験機「KES®」の製造などで培ってきた技術を活かし、化粧ブラシのコシ感やなめらかさに関する力を計測できる「ブラシ物性試験機」を開発しました。化粧ブラシは、肌に当たっても力がそれほどかからないため、個々のブラシのわずかな違いを数値化する必要があります。2 方向からの力を測定する仕組みを採用し、さらに小さな振動も拾わないようにするなど努力を重ね、微細な特性を正確に測定することが可能となりました。
開発のきっかけ
化粧ブラシの使用感は、繊維素材そのものの特性と束(ブラシ)にした時の立体構造の特性との相乗効果で得られます。これまでから、繊維素材の引張強度や曲げ剛性は、測定することが可能でしたが、製品形状である繊維束(ブラシ)は人の主観に頼る方法が主流でした。
しかし、効率的なブラシ開発や、自社製品の差別化のために製品形状での測定ニーズが高まっており、産技研が開発したブラシの力学特性を測定する機構をもとに、個体差のない試験機として開発することになりました。
完成までの経過
通常は、既存の規格に基づき、測定したい指標が決まった状態で試験機開発を進めますが、今回は、剛性、摩擦力など指標の方向性は決まっていたものの、具体的な指標の設定は、試験機を開発しながら進めるという異例の形式で進行しました。また、試験機として開発する際には、測定者のユーザビリティ(使いやすさ)や安全性の確保、ヒューマンエラーの軽減、様々なブラシへの対応が求められます。そのため、試作を何度も繰り返しながらなんとか完成に至りました。
今後の展望と課題
- 販売戦略
メインターゲットは化粧品メーカーやブラシメーカーです。将来的には、海外にも展開できればと考えています。 - 様々な用途への応用
化粧ブラシだけでなく、パフなどの圧縮試験や、ファンデーションの付着量の評価など、応用的な活用ができる可能性があります。また歯ブラシやその他のブラシへの応用など、幅広い用途を提案していければと考えています。 - 研究開発
現在の試験機は、力を計測、数値化するもので、人の感覚との関連付けは行われていません。この数値と人の感覚を繋げる、例えば、10 段階で8 以上なら「ふわふわ」などと定義づけることは、今後の研究課題の一つです。これが実現できれば、消費者はネットで数値を見てブラシの質を選べるようになり、今後の可能性が非常に広がると思います。
産技研の支援内容
ブラシの適用範囲を拡大するための要素の洗い出しや操作性の確認など、同社と協議を重ね、製品化を支援。
※株式会社タイキと産技研から、2024 年3 月に経済産業省の「新市場創造型標準化制度」を活用し、日本産業標準調査会(JISC)において提案した「化粧用ブラシの力学特性測定技術に関するJIS 開発」が採択され、2025年12月現在進行中。
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240312001/20240312001.html
担当研究員からひとこと
人がものを選ぶときに重要な「使用感」。この使用感を測定によって数値化するニーズは高いです。同社の独自技術である微小な力でも検出できる設計によって、肌に触れるブラシの力を測定できる試験機が完成しました。本試験機によって、メーカーでの開発の効率化、顧客体験(CX)の向上が期待されます。
PROFILE
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