
錠剤製造用金型(杵・臼)の高品質・高機能を保証する
生産システム・分析評価技術・管理システムの開発
株式会社ツー・ナイン・ジャパン

事業概要・成果
ツー・ナイン・ジャパン(以下、TNJ)は、錠剤製造用金型(杵・臼)の高品質化・高機能化を目指し、産技研と共同研究を実施。従来は熟練した職人技に支えられていた金型製作技術を移植し、新規開発したDX精密工作ロボットに多数の汎用ロボットを組み合わせ、金型生産ラインのFA(ファクトリーオートメーション) 化を達成しました。
また金型表面にコーティングしたセラミック薄膜に電子ビームを照射して膜厚を非破壊計測する新技術(特許出願中)のほか、金型表面の構造と性質を定量評価する多様な分析技術を考案しました。
一方で、公益財団法人京都高度技術研究所(以下、ASTEM)とも連携し、二次元バーコードを刻印した杵と臼を個別認識し、錠剤製造の稼働状況をリアルタイムモニタ可能な「杵・臼クラウド管理システム」( 特許出願中)を開発しました。
開発のきっかけ
TNJ は、錠剤用の金型の表面の研磨や特殊な表面コーティングなどにおいて不良品を出さないため、自社内に数多くのノウハウを持っています。特に、個々の「杵」の研磨は、ノウハウを持つ熟練技術者による手作業に頼っていたため、さらなる生産性の向上が困難な状況でした。この熟練した職人技からなる杵・臼の研磨工程の効率化について産技研に相談。2019 年から、産技研とTNJとの共同研究がスタートしました。
技術開発の経過
試行錯誤した結果、市販装置では代替できない「杵」と「臼」の研磨用の自動加工機の開発に成功しました。さらに研磨用自動加工機に「杵」をセットする作業の自動化にも継続して取り組み、産業用ロボットメーカーとも連携し、ついに研磨作業全体を自動化するシステムを構築、工場のFA化を実現しました。新設した工場では、新規開発したDX精密工作ロボットに多数の汎用ロボットを組み合わせた金型生産ラインが稼働しています。
他方では、金型の表面コーティングの特性の詳細な分析とその向上について検討。特に、表面コーティングの膜厚に対し高精度でかつ非破壊による測定を可能とする電子線を利用した測定手法を考案。こうした分析技術を駆使して、錠剤の種類に合わせた表面コーティング技術を開発、錠剤の品質と生産性の向上につなげました。
2021年からは、ASTEMと連携し「杵・臼クラウド管理システム」の開発を開始し、2022年から同システムの無償提供を開始しています。
産技研の支援内容
共同研究による
- 金型生産ラインのFA化を達成(新工場のFA 化実現)
- 金型の表面コーティング開発支援(開発手法提案とその特性評価)ASTEM と連携した「杵・臼クラウド管理システム」の開発
今後の展望と課題
- 製品受発注システム、生産ライン、製品管理システムの統合DX化
園部工場における生産ラインのFA化及びユーザー企業に無償提供中の「錠剤成形用金型(杵・臼)クラウド管理サービス」のシステム構築はほぼ完成しつつある。現在、製品受発注システム、生産ライン、製品管理システムの統合DX 化に取組中。 - 金型製造の内製化の取組
DXとAIの統合技術により、技術錠剤成形用金型(杵・臼)製品の出荷前品質保証自動検査システムを構築し、さらに金型生産中のオンライン検査システムへ拡張適用する。さらに導入予定の物理蒸着(PVD)装置の設置をもって製造の内製化が完了する。 - 社員の技術力向上のため取組
これまでの生産性向上の取組(生産ラインのFA化、打錠障害の解消、錠剤生産工程の質の高い管理など)から生まれた時間を社員の技術力向上のための講習、さらなる効率化に向けたアイデア考案などに振り向ける。
担当研究員からひとこと
京都の製造業にとって、技術後継者不足が将来のリスク要因になると予想されます。FA化はその課題解決策の一つ。中小企業にとってハードルが高いFA化について、同社社長を中心として、具体的なプランを企画し、実現していく力には感銘を受けました。
そして、産技研の研究員として共に開発を進めることで、新たな知見をたくさん得ることができました。これらを活かして、今後も京都市域の産業発展に貢献してまいります。
PROFILE
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- #目の輝き企業認定