
多孔性配位高分子/金属有機構造体(PCP/MOF)の構造に着目した消臭剤の製造技術の確立
大原パラヂウム化学株式会社

事業概要・成果
大原パラヂウム化学株式会社では、京都大学の研究グループが開発した新素材「多孔性配位高分子/ 金属有機構造体(PCP/MOF)」の構造に着目し、本物質が様々な種類の臭気を瞬時に消失させる驚異的な消臭能力を有することを発見しました。
同社では、PCP/MOF を消臭剤として用途展開することを目指し、微粉末状である本物質を扱いやすい様々な形状に成形する独自技術(特許取得済み)を確立しました。
PCP/MOF の成形技術を活用し、PCP/MOF とそれ以外の物質の配合や組合せを変え、様々な製品の作成を可能にしています。
開発のきっかけ
従来の繊維加工剤事業の顧客から、たばこや排泄臭など、取り除くことが難しい臭気の対策について相談を受ける機会が多くありました。
そういった状況の中、京都大学のプレスリリースを通じて、「多孔質」、「表面積が大きい」、「ガスを吸着する」、「気体をコントロールする」といった特徴を持つ PCP/MOF の存在を知り、様々な種類の臭気を吸着するのではないかという期待を持ちました。
技術開発の経過
2016 年頃からPCP/MOF に関する研究を開始したものの、従来の【水系乳化分散技術】では加水分解性のある微粉末状のPCP/MOF を扱うことは難しく、新たな技術開発へのチャレンジを要しました。
【粉体制御技術】の確立を目指し試行錯誤を繰り返し、微粉末のPCP/MOF をさまざまな形状に成形する独自技術を確立しました。
また、2020 年度から2022 年度には国のサポイン事業を活用。産技研では試作物の消臭性能を評価しました。
PCP/MOF を応用するためには自社の従来技術だけでは対応できない。そのことが返って新しい技術開発につながる力になりました。その結果、従来の繊維加工業界ではない、新規な業界への事業展開に向けたチャレンジが出来るようになりました。
産技研の支援内容
PCP/MOF 成形品の消臭性能を評価するため、高性能な試料を高い精度で計測可能な評価システムを独自に構築し、同社の技術開発を支援。
今後の展望と課題
- 幅広い市場での持続的使用につなげる販売形態の確立
原料となるPCP/MOF 自体が現状では高価であるが、自社が多量に使用する事でPCP/MOF の量産化を促し、コストダウンにも繋がると期待される。そのためにも、幅広い市場で持続的に使用されるような販売形態を確立していく必要がある。臭気や有害ガスによる課題を有する業界・企業に活用してもらうため、展示会出展なども活用し、本技術の周知を行う。 - 「気体制御技術」と名付け、臭気に限らず様々なガス問題に対してアプローチ
製品ラインナップも、当初開発した粒状製品やシート品だけではなく、より多くの場所で使用できるようにモジュール化も進めていく。
担当研究員からひとこと
PCP/MOF は次世代材料としての期待される一方で、種々の課題から、実用化はごく限られた分野にとどまっていました。
大原パラヂウム化学株式会社が開発した技術は、PCP/MOF の課題の一つである「微粉末状ゆえの取り扱いの
難しさ」を克服し、用途展開について新たな可能性を示しました。
PROFILE
- #消臭剤
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- #目の輝き企業認定