
木版画の魅力と技術を未来へつなぐ
伝統的工芸材料の分析と代替材料の提案
美術書出版 株式会社芸艸堂
代表取締役社長 山田 博隆 氏
――産技研を活用したきっかけは。
以前から京都工芸研究会※に所属していましたが、当社は出版社ということもあり、産技研自体を利用する機会はありませんでした。しかし京都工芸研究会の方たちと、当社が制作する木版画の技術上の課題について、情報交換をする中で、「一度産技研に相談してみては」と勧めていただいたのが、今回の利用のきっかけです。

――今回の技術的課題は。
木版画に使用する和紙には、にじみ防止のため、動物の皮などのゼラチン質でできた膠(にかわ)とミョウバンを水に溶かした「ドーサ」を塗っておく必要があります。しかしドーサに欠かせない膠は、特有の臭いの問題やそもそも作っているところが減っていることなど、今後の技術継承に向けて課題があります。そこで、代替材料を今のうちに確保しておきたいという思いから、産技研に相談しました。
――産技研を活用して解決できたこと、良かったことは。
これまで職人の感覚で作っていたドーサの粘度を分析し、食用に使われる一般的なゼラチンを用いて同程度の粘度になるよう条件を提示してくれました。職人に操作性を確保できているか確認しながら進めてもらいましたが、思った以上に短期間で結果を出していただいたので助かりました。今後、膠の確保が今以上に難しくなっても、この条件で対応できることが分かり、ドーサの供給を継続できる安心感につながりました。
――貴社の今後の展開は。
木版摺の図案をデータ化し、アパレルメーカーや自社雑貨等への図案利用も進めていますし、木版画そのものも今はインバウンドの影響で、制作が追い付かないほど発注があります。しかし、よく売れる時もあれば、そうでない時もあります。また、膠以外にも手に入りづらくなっている材料や道具もありますし、職人の後継者育成など課題も多いです。色々と試行錯誤しつつ、木版画の魅力とその技術を未来に残していきたいと思っています。
※京都の幅広い工芸分野の事業者約70社による研究会。産技研が事務局。
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