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伝統産業技術を礎とし、未来を切り拓く次世代の担い手を育てる

2025.06.27

伝統産業技術後継者育成研修

産技研における「人材育成」の取組の源流は、陶磁器業界の近代化を進めるため設置された京都市陶磁器試験所(1896年設立)での業界の師弟に近代的学理と実習を伝習した「伝習生制度」(1899年開始)にさかのぼります*。染織分野では1934年に京都市染織試験場に「染織実習制度」を設置、「色染機織及図案」について実地指導と講義により「優良ナル染織技術者ヲ養成」を目的として開始されました。その後、伝統産業の人材育成は、時代とともに対象分野や実施体制を変えつつ、2014年、現在の伝統産業技術後継者育成研修として引き継がれています。
「京都市伝統産業活性化推進条例」(2005年施行)第12条では、「京都市は、伝統産業に関する高度な技術を継承するとともに、伝統産業製品等の製造、加工等に従事している者の後継者を育成するために必要な措置を講じなければならない。」と規定されています。
産技研では、これまで業界を支える多くの職人や担い手を輩出してきた伝統産業技術後継者育成研修を、業界との緊密な連携を図りつつ、産技研の得意技術をいかした科学・技術・技能が三位一体となった研修内容とし、基礎から応用まで系統立った学修機会を提供してまいります。
*鎌谷親善:化学史研究,No.3,pp.97-115 (1987).

陶磁器
陶磁器
漆
漆工
友禅
京友禅(手描)
西陣織
西陣織
染色
染色基礎

産技研では伝統産業の担い手の育成事業として、陶磁器、漆工、京友禅(手描)、西陣織、染色基礎の各分野で研修を開講、全8コースを実施しています。
本研修は、研修生それぞれの個性に合わせた丁寧な指導により、技術・技能の基礎から高度な応用への展開と専門的な知識を学ぶことができます。そのためしっかりと基礎から学びたいと考える方のほか、美術系大学や技術専門学校などを修了した方々も多く受講いただいております。また、既に業界で活躍されている事業者の皆様がリスキリングのために受講されたり、販売担当の方が技術への理解を深めるために受講されることもあります。
本研修から毎年約80名もの修了生が巣立ち、伝統産業の各業界で活躍しています。
心の豊かさと新たな価値を創造する伝統産業。この京都の地で、伝統産業の新しいものづくりを学びたい方はぜひ受講をご検討ください。

伝統産業技術後継者育成研修のPOINT
・熟練の講師陣による指導のもとで基礎から応用まで幅広く技術・技能が習得できます。
・先進技術の知見をもとにした科学的なアプローチが学べます。
・研修生同士や講師陣との交流を通じ人脈の輪を広げることができます。
・研修修了後、継続した技術支援や産業支援機関等の連携による販路開拓のサポートが受けられます。

各コースの詳細はこちら
Web
https://tc-kyoto.or.jp/densan/

YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ADy4ex_q5Xw

修了生の声

  研修での思い出や現在の活動などを伺いました。

山本 優也 氏

陶磁器 山本 優也 氏(壹楽窯)
2016年度及び2021年度 陶磁器コース修了、2022年度 陶磁器応用コース修了
Web https://kyoyaki.com/kamamoto/ichirakugama/

研修で得た知識は作品の釉薬づくりにいかしています。作品制作においては特に釉薬にこだわっていて、私の人気シリーズ「桜オーロラ釉」は、200〜300個のテストピースを自ら作成し、様々な実験を重ねて完成しました。この釉薬の完成は、研修で得た知識が基盤になっています。また、研修を通じて同期の陶磁器や漆工のコースで多くの友人を得て、現在も切磋琢磨しながら交流を続けています。彼らは私にとって大切な仲間です。さらに、産技研からは研修修了後もギャラリーでの展示販売に関する情報を提供してもらっています。今後は、釉薬の研究を進め、新たなラインナップを増やしていき、作家としてさらなる成長に挑戦していきたいと思っています。

竹村 雪子 氏

漆工・漆工応用 竹村 雪子 氏(suosikki)
2022年度 漆工応用コース修了、2023年度 漆工コース修了
Instagram https://www.instagram.com/yukiko_urushiworks/
Web https://www.suosikki-urushi.com

研修では主に漆工・蒔絵の技術を学びました。それに加え、歴史的知識や科学的な理解など多角的な視点からも学ぶことができ、漆への理解を一層深めることができました。研修修了後は先生からお誘いいただいた展覧会に出品するなど、研修で得た人脈や経験から少しずつ活動が広がっています。仲間にも恵まれ、今でも連絡を取り合って情報交換しています。今年の初めには修了生で集まってグループ展も開催しました。産技研からは商品の展示や販売について公募の案内を度々お知らせくださり大変助かっております。先生方や職員の方とのお話でヒントを貰い、新たな技法や表現を模索中で、一部は商品化に成功しました。今後も習得した技術や知識をいかして様々なことに挑戦していきます。

京友禅(手描) 亀井 彬 氏(株式会社 ゑり善 代表取締役社長)
2016年度 第49回基礎コース修了
Web https://www.erizen.co.jp

着物販売の専門店である私達が今こうして商いを続けられているのは、洗練された感性と卓越した技をもち、着物の世界を支えている作り手の皆様のおかげです。研修で自ら制作した作品は恥ずかしいほど不細工なもの。線一本、色一色をとってもこれほどまでに違うのかと作り手の皆様の力を痛感いたしました。研修で得たご縁により作り手の皆様の声に触れることができるのも大きな財産。美しい着物を後世に伝えるためには、一人でも多くの方にほんまもんのものづくりの魅力を「伝える」ことは欠かせません。お客様に近い立場から「伝える」役割を担う私達にとって、この研修は作り手の技術に触れる貴重な機会となっており、心から感謝しております。

谷 太志 氏

西陣織 谷 太志 氏(株式会社 長嶋成織物)
2024年度 西陣織コース修了

西陣織の研修を通じて、織機のパーツ調整や不良箇所の見つけ方を学び、実際に自分一人で簡単な修理ができるようになりました。さらに、西陣織への関心が深まり、研修中に知り合った方の紹介で手機を譲り受け、伝統的な織物や新しい表現方法を追求するため個人として準備を始めています。伝統産業の将来を考えると、従事する人を増やし、特に若い人材の確保が不可欠です。そのためには、本研修も含め、行政等による支援によって、伝統産業の魅力を伝え、それにより業界が活性化することで、若い世代の就職先として伝統産業がその選択肢の一つになっていくと思います。

山本 優也 氏

染色基礎 大原 康史 氏(株式会社大原商店 代表取締役)
2024年度 染色基礎コース修了
Instagram https://www.instagram.com/instaoharagram/
Web https://www.oharashoten.jp

弊社は組紐や帯揚げなどの商品企画をしておりますが、近年は発注通りの色にならないことが課題でした。研修を受講して、糸染めや生地染めの難しさを実感するとともに、社内や加工先から長年「できない」と聞いていたことがそうでもないと知りました。私自身に技術は無くとも、知識が身につけば加工先や職人の困りごとを聞いて調べることはできます。先生方には様々な相談に乗ってもらい各課題に適切な解決方法や知識を紹介いただき、数年前にできなくなった商品が再びできるようにもなりました。伝統産業は、携わる人や情報が分断されていて、それが課題になっていると感じます。弊社としては、現場に寄り添い、一緒に課題を解決し、伝統産業を盛り上げたいです。

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