ヒト

職人紹介 中川 正洋 氏
INTERVIEW
常に「探求」し、オリジナルのものづくりを
私が京都に来たのは22歳の時。初めて見た染物の美しさに心を打たれ、友禅の仕事を始めました。友禅染は多くの工程を経て作られる分業で成り立っています。27歳で独立し工房を運営しましたが、仕事に打ち込む中で工程の一部を担う職人ではなく、全ての工程を自ら行う、つまり作家を志すようになり、35歳の時に京都市染織試験場(現:産技研)の本友禅染(手描)技術者研修で手描友禅加工の全工程について一通り基礎から学びました。しかし、この頃から景気が悪くなり、仕事が激減。辛い時期でした。
作家を目指す上で重視したのが伝統的な真糊※1づくりと蒔糊※2技法です。試行錯誤を続け、37歳で展覧会入選。技術の精度を上げ、ようやく60歳になって真糊・蒔糊を使いこなし、自信をもって自分のオリジナルといえる、糯糊堰出友禅※3の作品ができるようになりました。
これからの若い職人には、常に「探求」してほしいと思います。染料も市販染料でベストとは思わず、独自の色を見つけてほしい。素材も縮緬だけでなく紬など様々な織物を試してほしい。何を作るかも大事です。私はタペストリー、屏風、軸など着物以外の制作にも力を入れ、これからも探求心を忘れずに友禅染による新しいものづくりに挑戦したいと思っています。
※1 真糊(まのり):糯粉(もちこ)などでつくる防染用の糊
※2 蒔糊(まきのり):真糊に亜鉛粉末を加え、乾燥後粒状にし、生地に蒔いて防染することで細かい点描を表現する技法
※3 糯糊堰出友禅(もちのりせきだしゆうぜん):染色箇所の境に模様の輪郭となる線(糸目)の跡を残さない友禅染

PROFILE

叡麓苑・EIROKUEN
京都市左京区八瀬
秋元町135-28
Tel/Fax:075-721-0091
Mail:eirokuenn@gmail.com
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