特色・内容
漆を中心とした工芸分野に関する業務を行っています。特に、漆や合成樹脂塗料の塗装に関する技術分野、漆工技術に加え、漆器デザインに関する業務を行っています。合わせて、文化財修復において、古い塗膜中の塗料や塗料用顔料などの分析を行っており、漆に限らず膠や胡粉などの天然材料に関して対応しています。対象業界は、伝統産業である京漆器、京仏具、彩色や修復関連など多種多様な業界です。
・漆の新たな活用について
合成塗料の多くは石油から作られ、塗るときにはシンナーで薄める場合や、乾燥させるときには熱が必要とする場合があり、環境に負荷を与えることがあります。一方、漆という塗料はウルシノキから採取されます。酵素の働きで乾燥しますので、熱や塗るときのシンナーも必要ありません。つまり、漆は木によって作られる環境にやさしい酵素反応型の天然塗料です。その漆に関して長年にわたり携わってきましたが、現在でも、この漆の性能を向上させる研究(漆を変える)やこの漆をお手本としたこれまでにはない全く新しい塗料の開発(漆をつくる)を研究しています。
分散技術を利用した非常に透明度の高い生漆塗膜
・文化財修復における分析技術について
日本国内には非常に多数の有形文化財が存在しています。これらの文化財は、長い時間とともに劣化していきますが、後世に残し伝えていくためには、適切な修理・修復を継続することが重要です。そのためには、修理・修復にあたって、当初用いられた材料を正確に知ることが必要不可欠となってきます。そのために、文化財に用いられている材料の情報を得るため、保有する装置とこれまでの知見を駆使して分析を行っております。その他、分析精度の向上や、これまで分析が困難であった材料の測定法について検討を行っております。
熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた塗膜の分析結果の一例
※TIC:全イオンクロマト、m/z:質量電荷比
・工芸デザインについて
近年、若年層を中心に漆器をはじめとした伝統産業の魅力が見直されつつあります。当チームでは漆器、陶磁器、金属工芸、竹工芸等をはじめとした京都らしい伝統産業について、2D及び3D-CAD/技術や3Dスキャナー・3Dプリンタ―などの設備を活用し、新商品企画立案から製品設計まで総合的にサポートしています。とくに、より幅広く「使いやすさ」を追求したユニバーサルデザインの研究及び商品企画を得意としております。
個人事業主の作家様・職人様から企業まで、規模を問わずご対応させていただいております。
最近のトピックス
池永次席研究員が博士(学術)を取得しました。テーマ名:「漆に含まれる成分の機能と新規な漆硬化法の研究」(2020年3月25日、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科)
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