京都地域の安全・安心なものづくりを支援するために、金属材料を中心に、その部品、製品の破損等の原因究明、それに伴う製造工程の改善、品質管理、及び新材料・製品開発に関する技術的支援を行っています。また、新しい知見や新しいモノを生み出し、公的研究機関として地域社会への成果還元を最大化できるよう、『持続可能な環境調和型社会の実現にむけた新規材料およびプロセス技術の研究開発』にも積極的に取り組んでいます。
金属材料を使用した製品や部品あるいは金属材料そのものについて、「なぜ壊れたのか?」「なぜ変色したのか?」「なぜ摩耗したのか?」そして「それらの問題を起こさないようにするにはどうすれば良いのか」を調べるため、材料評価試験(強度試験)、表面状態の観察、腐食試験、振動試験、製品の温度分布測定など、様々な試験や分析を行い、課題の解決へと導いていきます。
近年では、「不良品を減らしたい」「今まで廃棄していたものを有効活用したい」「製品を長寿命化したい」「従来の製造プロセスを効率化したい」「有害元素を減らしたい」といったご相談・ご要望が多くなってきています。これらに共通するキーワードは「持続可能な環境調和型社会の実現」であると捉え、取り組むべき長期的な目標のひとつとして掲げています。その貢献に不可欠となる『材料開発及びプロセス技術の創造』に向け、水素分析技術及びその応用研究、高温使用可能なセラミックス低温接合プロセスの開発、金属ナノ粒子の合成・形態制御に関する研究、金属材料リユース技術の開発、難溶解試料の分析前処理技術及びその分析技術の高度化などの研究開発を実施しています。また、新型コロナウイルスとの共存社会の構築をはじめとする医療・衛生分野においても、材料・プロセス・分析の各方面から貢献できるよう、検討を進めています。
Nanotechnology誌に掲載された金属ナノワイヤーの形態制御に関する研究成果が、カナダのリサーチ会社Advances in Engineering (AIE)社のKey Scientific Articleに選出されました。
AIE社は、主な学術雑誌から実用的、応用的観点から重要な基礎研究を抜き出し、世界の民間企業にその研究成果の概要をアナウンスし、コンサルティングやマッチングを行う会社です。
今回掲載された論文は、液相還元法によるニッケルナノワイヤーの合成において外部磁場がナノワイヤー形成に及ぼす影響について調べ、ナノワイヤーの形成メカニズムを明らかにしたものです。
添加する物質の種類や量を変化させず、外部磁場の強度のみを制御することで、さまざまな形態のナノワイヤー不織布を合成できることを示しました。また、本研究により、ナノワイヤーの微視的な構造が、不織布全体の巨視的な性状に影響を及ぼしていることが明らかになりました。
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佐々木化学薬品(株)との共同研究において、切削工具・金型などの金属材料上に成膜される硬質皮膜の除膜液を開発し、同社から商品化いたしました。
今回、共同開発した除膜液は市販品と比較し、硬質皮膜の除膜に要する時間を12分の1に短縮するものであり、金属材料のリユースに大きく寄与するものです。
これからも金属材料のリユース技術開発を行い、環境負荷低減に貢献していきます。
(リンク:http://tc-kyoto.or.jp/info/news/post-277.html)
<発表タイトル>
放電プラズマ焼結法によるTi-TiH2焼結体の作製
<内容>
本研究は、関西大学凝固プロセス研究室との共同研究で行った成果であり、内容はグロー放電発光分析法における水素分析技術の確立を目的として、水素吸蔵法や粉末冶金法を利用した水素分析用標準試料の開発を目指したものです。詳細は、弊所研究報告No.7をご参照ください。
平成28年11月17日~18日に開催された「第18回関西表面技術フォーラム」において、優秀講演賞を受賞しました。
<タイトル>
「金属ナノ粒子の液相合成における析出挙動のその場測定およびナノ粒子の粒径分布制御」
<内容>
液相合成による金属ナノ粒子の製造は、スケールメリット、コストメリット等の観点から広く注目されている技術です。しかし、さらなる実用化に向けて、ナノ粒子の粒径分布をどのように制御するか、また、そのメカニズムをいかにして理解するかは、極めて重要な検討課題です。
今回賞をいただいた発表では、液相還元法により作製した銅ナノ粒子の粒径分布制御に関する検討結果について報告しましたが、本研究で得られた知見は、銅ナノ粒子に限らず、あらゆる金属ナノ粒子の制御技術の根幹になるものであると考えています。
引き続き、金属ナノ材料の作製技術の高度化に向け、研究開発を進めたいと思います。