表面処理チームは,素材上へ密着性良く金属薄膜を形成し,錆を防いだり,その意匠性や機能性を飛躍的に向上させることができる"めっき" 及びめっきプロセスを応用した"電鋳(でんちゅう)" と呼ばれるめっき金属皮膜そのものを製品とする,主に電気めっきを中心とした表面処理技術に関する研究開発,技術移転・指導,試験・分析,人材育成及び研究会育成の業務を担当し,めっき業界等の技術支援を実施しています。
めっき技術は,省資源で機能性や意匠性を飛躍的に向上させる表面処理として機械金属,電気・電子部品,自動車,化学などの幅広い基幹産業を支える基盤技術であり,ものづくりの要素技術となっております。
表面処理チームでは,めっきプロセスを応用した「電鋳技術」を得意技術としており,他の機械加工等の製造プロセスでは不可能な微細形状を正確に転写できる「銅電鋳技術」を仏壇・仏具用金具の量産技術に日本で初めて展開するなど,伝統産業分野のものづくりに活用されてきました。その後,ニッケル電鋳技術の研究開発を行い,その成果は,現在のCD等の金型や回折格子等に活用されています。また,近年「電鋳技術」は他の機械加工等の製造プロセスでは不可能な先端技術のものづくりプロセスに広く利用されつつあり,その重要性を増してきています。
現在の研究業務としては,低熱膨張電鋳プロセスの開発,電鋳技術による微細加工技術の開発および環境対応の表面処理プロセスの開発などに取り組んでいます。
京都市産業技術研究所と大学やものづくり中小企業で行っている共同研究の成果を2010年12月2~3日,「第12回関西表面技術フォーラム(主催:(社)表面技術協会関西支部, (社) 表面技術協会ウェットプロセス研究部会)」において発表したところ,表面処理チームによる3件の研究発表がすべて優秀講演賞を受賞しました。
<研究内容>
受賞した3件の研究発表テーマは,表面処理チームの研究シーズから発展し,外部資金「文部科学省 知的クラスター創生事業(第Ⅱ期)(平成22年度から地域イノベーションクラスタープログラムグローバル型(第Ⅱ期)へ変更)」を活用し,研究を進めています。
大きなテーマとしては,「環境調和型ナノめっきプロセスによる希少金属代替高度部材の創製」を目標に,従来の表面処理プロセスで多用されているレアメタルの一種,ニッケルの使用量を大幅に削減したうえで,更に従来技術よりも高機能化を図る表面処理プロセスの開発及びその実用化を目指しているものです。
具体的に,(1),(2)のインバー(Fe-Ni)合金電鋳プロセスでは,メタルマスクやフェルールなど次世代の電子・通信デバイスへの適用が,(3)のスペキュラム(CuSn)合金めっきプロセスでは,コネクタ類や水洗金具などへの適用が期待され,日本国内にとどまらず海外からも注目されています。