特色・内容
京都のものづくり産業は、染織、陶磁器、漆器、金属工芸、竹工芸等をはじめとした伝統分野と、近代工業分野の共存に特徴があります。多様な領域にまたがる中小零細の地域企業のものづくりを、所内各担当者と技術的な側面について連携を取りつつ、サポートしています。
ものづくりのサポートのためには、現代生活にあった商品のマーケティングや製品企画(コンセプト)、製品の設計やスタイリングの検討、さらに販路を意識し流通に乗せていく一連の製品開発プロセスが重要です。このプロセスに各種のデザイン技術を活用するとともにデジタル技術の導入を図るための支援を行っています。
また、付加価値として「京都らしさ」をコンセプトに据えることが大切だと考えています。伝統産業の意匠や色彩などの文化的なデザイン要素を現代に生かしたデザイン開発にも取り組んでいます。
【事例】3DCD/CAD/3Dスキャン・3Dプリント/レーザー加工機等
3Dスキャナー及び3Dプリンター,レーザー加工機を活用し、工業製品の試作モデル出力に対応し、製造、設計へのアドバイスを行っています。工業製品だけでなく、漆器の素地や陶磁器の鋳込み型の原形など伝統工芸品にも応用しています。
また、レーザー加工機は各種素材に高出力のレーザー光を照射し、彫刻や切断などの加工を行うことができます。研究所ではさまざまな素材に加工を行い、レーザーならではの加工手法や装飾効果を追求しています。
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3Dプリンタによる出力モデル |
レーザー加工による陶磁器の表面への加飾表現 |
【事例】グラフィック/情報/テキスタイル・染織などのデザイン
画像加工ソフトにより、グラフィック/情報/テキスタイル・染織などのデザイン技術を保有しています。研究所の研究成果である伝統染織の色彩情報に基づいた商品開発へのアドバイスを行っています。
【ものづくりの担い手育成】
伝統産業技術後継者育成研修の京友禅染(手描)技術者研修を実施しています。この研修では、着物や染帯のデザインから下絵、糊置、引染、挿友禅、金彩までの工程について、工房実習を含めた各工程の名匠による直接指導のもと、より実践的な技術指導を通じて手描友禅の若手技術後継者を育成することを目指したプロ養成コース、ゴム糸目友禅※1の見本を基にした実習や講義を通じて、各工程の基礎的な知識と技術の修得を目指した基礎コース、手描友禅に関する多種多様な技術・技法の中から、特化した技術をテーマにして実習を隔年で行う専門コースという3コースの研修を行っています。
※1:ゴム糸目友禅(ごむいとめゆうぜん)
手描友禅染の代表的な技法で、生地上に下絵した模様の輪郭に沿って筒紙を用いてゴム糊を糸目状に置いて防染し、その中を挿友禅することで模様を染め分ける染色技法です。
【研究会等の活動支援】
京都工芸研究会の事務局を担当しています。異業種交流による商品開発事業、定例の竹編組勉強会、見学会のほか、H29年度から3D技術講習会を京都陶磁器研究会、京都先端技術研究会と共催で実施しています。
このほか、京友禅染(手描)技術者研修修了生の同窓会組織である「虹彩会」の運営と展示会活動支援を行なっております。
デジタル2D技術活用講習会
「フリーで使える!グラフィックソフト初心者講習」
令和2年9月4日(金)、7日(月)、18日(金) |
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商品開発事業「おとなの京もの ~いのりのかたち~」展示販売 平成29年9月 於 高島屋京都店 |
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オンライントークライブ「工芸な人々」
令和3年2月25日(木)19:00~20:00
京都工芸研究会YouTubeチャンネル上にてライブ配信 |
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用語説明
- 3Dスキャナー

- 工業製品から伝統工芸品に至るまで、さまざまな製品の外形状を瞬時に3Dスキャン(三次元デジタイズ)し、外観の形状をデジタルデータとしてコンピュータ上に高精度に再現することができます。ものづくりのスピードアップや品質向上にお役立ていただけます。
- 3Dプリンター

- 当研究所で導入している造形装置は「熱溶解積層」という方式で、形状データを「輪切り状の断面の積み重ね」に変換して、細い糸のように溶かしたプラスチックを一層ずつ積み重ねて立体化します。この方式は耐衝撃性・耐熱性に優れており製作コストも低く、複雑で正確な造形を短時間・低コストで製作できる利点があります。
- レーザー加工機

- さまざまな素材に高出力のレーザー光で切断、彫刻などの加工ができるデジタル工作機械です。
最近のトピックス
■福祉/介護/医療関連やウィズコロナ時代への対応等、社会的課題解決への取組
●「フェイスシールド」等
大阪大学のプロジェクトに賛同し「産技研モデル/産技研ライトモデル」の2種「フェイスシールド」を改良設計し、3Dプリンターで生産しました。市役所・市内病院・介護施設等、のべ14件、446個を製作・提供し、物資不足に貢献しました。
また、手首で開閉できるドアノブ治具(ハンズフリー・ドアオープナー)を、Materialise社の基本設計を元データに市役所本庁舎のドアノブ形状に合わせて3D-CADにて再設計、3Dプリント品を市役所第一応接室に提供した。
写真 左:「フェイスシールド」 右:「ハンズフリー・ドアオープナー」の改良デザイン
●「飛沫防止用パーテーション」
コロナ下における飲食業やビジネスシーンにおいて、飛沫防止用具としてのパーテーションのニーズが高まる中、昔ながらのおもちゃである「変わり屏風・からくり屏風」の構造をヒントに「多様な形態に変化するパーテーション」のアイデアを創出し、京都樹脂株式会社とともに開発を進め、飛沫防止用パーテーション「patapata」として商品化しました。
広報資料
http://tc-kyoto.or.jp/info/2021/05/20210517_koho.pdf
動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=uA6-5euPxGg
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●「触地図ガイドブック」開発(平成29~令和元年度)
大平印刷(株)(京都市伏見区)との共同研究により、「元離宮二条城の触地図ガイドブック」(写真上)が完成し運用されています。
本共同研究では、社会福祉法人京都ライトハウスと元離宮二条城事務所の協力の下、京都観光におけるユニバーサルツーリズム ※2 の観点から視覚障害を持つ方にも京都観光をより一層お楽しみいただくため、触地図ガイドブックを開発しました。
令和元年度は、「触らないと伝わらない環境情報の伝え方改革」を研究テーマとし、京都府立大学、京都市産業技術研究所、京都府立植物園との共同チーム「府大ACTR触地図プロジェクト」を立ち上げ、触地図+音声ペンを組み合わせた京都府立植物園版の開発も行いました(写真下)。令和2年度の京都環境賞(京都市)の優秀賞を受賞しました ※3。
※3:大平印刷株式会社ウェブサイト
https://www.taihei.co.jp/1508
※4:ユニバーサルツーリズムとは、全ての人が楽しめるよう創られた旅行であり、高齢や障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指しています。
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■研究成果の応用事例
●クラウドファンディング活用による伝統産業(京焼・清水焼)新商品プロデュース
掬いやすさと美観を両立した、ユニバーサルデザインの陶磁器製食器(カレーライス用皿)を設計しました。設計だけでなく、クラウドファンディング「makuake」にて商品プロデュースも行い、大量生産用の設備投資の費用獲得を支援しました。
●陶磁器へのレーザー加工による加飾技術を用いた銘板のデザインと作成
(窯業系Tと連携 受託研究 令和2~令和3年4月)
京都リサーチパーク10号館(京都市下京区 令和3年4月28日オープン)1Fのアルミキャストパネルの説明用銘板を京都市内清水焼事業者とともに作成しました。90cm×60cmの陶板2枚に対し、アルミキャストパネルのコンセプト文や図案などをレイアウトデザインし、レーザー加工によって精緻に描きこむもので、「レーザー加工機を活用した新しいデザイン表現の研究」(平成28~29年度)の成果を応用しています。
ご利用者向け
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